当協会専任講師 松永勝宣
学科試験合格率70%という結果からかなり厳しい内容を予想していたが意外に易しい内容であった。
受験者の感想も大概易しかったという反応が多かった。出題内容としてはほとんどが新規問題で一部理論的な出題もあったが、新規問題とはいえ現場の実務に絡む出題で、現場実務者には取り組みやすい問題であったと思う。二年前の改正で「実地試験は、より実務に関する出題とする」と謳っていたがその傾向が今年ははっきり出たと思う。しかし、全体的には仮設や土工に絡む問題が多く、いささかバランスに偏りを感じた。
問題1
注目の第一問施工経験記述は「工事で実施した仮設計画」が課題であった。やはり、品質管理、工程管理、安全管理という旧来のカテゴリーからより細分化したテーマでの出題であった。これできっぱりと新しい出題カテゴリーによる出題となるということを覚悟し、対策を講ずるべきである。
一部、記述代行業者の横行により施工経験記述試験の意義が失われるという危機感を出題者側はより強くしているのでこの傾向はさらに鮮明になる。
さて、この「仮設計画」の課題については、準備が無くても比較的かけた人が多かった(内容、レベルについては様々であるが)。記述にあたっては安全管理の観点で土止め支保工や足場、型枠の構造上の安全確保を課題としてあげ、まず構造上の安全基準を念頭に置いて検討項目(座屈防止、沈下、滑動防止、継ぎ手の構造、組立作業の安全基準、材料の品質など)を箇条書きに列挙し、それに対して処置・対策を、学科試験でおなじみの内容で書いていけば問題とならなっかた筈である。出題者からすれば、これが書けなければおかしいという認識であろう。
問題2 土工
設問1
土留め支保工の根いれ深さの計算に関する問題と掘削底面の崩壊現象(ヒービングー粘性土 ボイリングー砂質土)地下水低下工法。根入れ深さ計算についでは新規問題。(イ)水圧ーこの正解率はかなり低いが、これ以外は既出問題もあり概ね書けている。
設問2
これは環境対策で出題されてよい問題。建設発生土のうち、含水比の高い粘性土の土質改良方法を問うものであった。新規問題。その方法がかけても留意すべき内容が書けず正解率低かった。
問題3 コンクリート工
設問1
コンクリート施工に関する記述の正誤を問い、誤った箇所の訂正を要求するものであった。
出題形式は過去1、2年の形式と同じである。ひび割れのシール剤など一部新出のつっこんだ問題もあったが、誤ったもの三つを抽出し解答することは易しかった筈である。正解率は最も高かった。
設問2
コールドジョイントの発生の防止対策を問うものであった。
出題のタイトルとして「コールドジョイントの防止対策」というのは初めてであるが、内容は「打ち継ぎ目の留意事項」と基本的には同じである。これも、正解率高い。
問題4 施工計画(例年は品質管理)
設問1
道路の地下埋設物が予想される場合の工事に関する記述の箱入れ問題である。
「建設工事公衆災害防止対策要項」で答えるか、整備局等の「地下埋設物の事故防止対策マニュアル」等で答えるかにより解答語群も若干異なり、どの程度の正解許容を許しているか微妙である。が、解答数6個のうちほとんどが3個以上の正解を得ていた。
設問2
類似問題は平成9年にでている。
道路盛土を行う条件であるので、単なる表層処理工法ではなく、将来の舗装表面の段差や亀裂の発生を防止する「沈下防止に効果のある対策工法」の選択を勧める。出題の題意を広くとらえるか狭くとらえるか判断に迷う所であるが、とんでもない的はずれで無い限り、正解の許容範囲は広いとみる。
いずれにしても半分以上は出来ていた。
問題5 安全管理
設問1
「道路工事保安施設設置基準」に準拠した問題。新出の問題であった。現場実務のある受験者には(業種にもよるが)得点のしやすい問題であったと思う。
設問2
建設機械(バックホウ)による地山の掘削作業における安全対策(ダンプトラックへの積み込み作業あり)を問うもの。これは、学科試験で頻繁に出題されている内容であって、これが書けないと厳しい。
選択した受験者は、ほぼ書けていた。
問題6 環境対策
設問1
騒音、振動防止対策に関する出題。昨年は施工計画で出題された内容。コンクリートの次に正解率が高かった。
設問2
建設リサイクル法
元請け業者の役割を問うもの。類似問題は過去にあったが正解率は低かった。十分出題が予測された箇所であったので、この問題6を選択して得点を稼いだ人は、比較的楽に合格点を固めた。