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国土交通省は2月1日、「基礎杭工事における工事監理ガイドライン(案)」並びに「基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン(案)に関する意見募集について」を発表、同案に対する意見を広く収集し、ガイドラインの最終的な決定を行う際の参考にしたいとしている。

基礎杭工事における工事監理ガイドライン(案)

国土交通省発表  28年2月1日

1.ガイドラインの目的及び位置づけ
このガイドラインは、基礎ぐい工事が設計図書どおりに適正に施工されることに寄与するため、工事監理者が基礎ぐい工事における工事監理を行うにあたって留意すべき点を示すことを目的とする。
本ガイドラインの対象工事は、くい先端の支持力を主として考慮し掘削孔内に既製コンクリートぐいを沈設する工法を採用した基礎ぐい工事とする。また、その他の基礎ぐい工事においても適宜参考とすることが望ましい。
工事監理者による「工事と設計図書との照合及び確認」の方法については、既存の「工事監理ガイドライン」(平成21 年9月策定)において、設計図書に定めのある方法による確認のほか、目視による確認、抽出による確認、工事施工者から提出される品質管理記録の確認等、確認対象工事に応じた合理的方法により行うこととされている。本ガイドラインは、基礎ぐい工事における合理的方法について具体的な内容・考え方を示すものであり、既存の「工事監理ガイドライン」とあわせて活用されることを想定している。
なお、本ガイドラインは、「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することができる報酬の基準」(平成21 年国土交通省告示第15 号)別添一第2項第一号「工事監理に関する標準業務」に掲げる業務を行う場合を対象としたものであるが、実際には、建築主との契約により同第二号「その他の標準業務」に掲げる業務などをあわせて行う場合が想定される。その場合は、本ガイドラインのみならず、契約内容等に従って適切に業務を実施することが必要である。

2.工事監理者の役割
工事監理者は、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認し、実施されていない場合には工事施工者に対してその旨を指摘し、当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、工事施工者がこれに従わない場合は建築主へ報告することとなっている。これらの業務を適正に行うことにより、工事監理者は、設計者や工事施工者とともに、適法で安全・安心な建築物の実現を担保する役割を担っている。
基礎ぐい工事は、目に見えない地盤を対象に行うものであり、支持層の確認にあたって掘削機の音及び振動、地中から受ける抵抗(電流値、積分電流値等)や土質も含めた総合的な判断を特に要する難度の高い工事であるため、工事監理者は、工事監理にあたって慎重を期し、工事が設計図書どおりに適正に施工されることを確認するものとする。

3.工事監理方針の決定にあたって把握すべき事項
工事監理者は、工事監理方針を決定するにあたって、以下の事項を把握することとする。
(1)地盤条件や施工上の留意事項等
工事監理者は、工事監理を行うにあたっては、あらかじめ設計図書の内容及びその前提となる設計条件等を的確に把握しておく必要がある。特に基礎ぐい工事においては、設計者が設計の際に把握した地盤情報(支持層の位置等が複雑な地盤であるかどうか、支持層の判断根拠、敷地内の既存ぐいの有無やその処理状況等)や設計において選定した基礎ぐいの施工上の留意点(くい種・工法の特徴等)が、適正な施工及び工事監理を行うにあたって重要であるため、これらについて、設計図書や建築主を通じて設計者から受ける説明等により把握することとする。また、関係者(建築主、設計者、工事監理者、工事施工者)はこれらの事項について事前に情報共有を図ることが望ましい。
また、設計内容等に疑義等がある場合は、施工前に、建築主に報告し、必要に応じて建築主を通じて設計者に確認するなど必要な対応を行うこととする。
(2)工事施工者の施工計画
工事施工者が作成する施工計画について、設計図書のほか、基礎ぐい工事の適正な施工を確保するために講ずべき措置について定めた告示及び当該工事施工者の属する建設業団体の自主ルール(以下「告示等」という。)を踏まえて、元請と下請の役割分担、くいの支持層への到達等の技術的判断方法、施工記録の確認方法、施工記録が取得できない場合の代替手法等が適切に定められているか否かを把握することとする。その際、必要に応じて工事施工者に説明を求めることとする。

4.工事監理の実施方法
工事監理者は、工事監理方針の決定にあたって把握した事項を踏まえて、以下の方法により工事監理を実施することとする。この際、施工計画に定められた施工記録の確認方法等が設計図書及び告示等に照らし十分ではないと判断した場合は、工事監理を適切に行ううえで必要な範囲で工事施工者に指摘し、必要に応じて建築主に報告するなどの対応を行い確認方法等の見直しが行われたことを確認する、@の立会い確認における抽出率を高く設定する等の適切な対応をすることとする。

なお、複雑な地盤状況である場合や敷地内に既存ぐいがある又は既存ぐいが撤去され埋め戻しされた場合、支持層の位置等について設計図書等において設計者の特別な指示がある場合などは、それらを踏まえて、適正かつ慎重に工事監理を行うこととする。
また、工事の施工中に得られた知見等により必要がある場合には、建築主と協議して工事監理方針を適宜変更するものとする。
@立会い確認
・工事に先立ち、又は工事の初期に、くいの施工における各種監理基準値等を定めるために施工するくい(以下「試験ぐい」という。)については、原則として当該施工に立ち会って、くい長、くいの位置、支持層の土質、支持層への根入れ深さ等をはじめ、必要な項目について確認するとともに、工事施工者による施工管理のもとで設計図書どおりに施工されることを確認する。
・試験ぐい以外のくい(以下「本ぐい」という。)については、設計図書等により確認した地盤の状況等を踏まえ、適正な工事監理を行うことができるよう、必要に応じ、その施工に立ち会って確認するくいを適切に抽出して決定する。
・工事の施工中においても、試験ぐいの結果や実際の地盤の状況等を踏まえ、適宜、立会い確認するくいを追加する。
A書類確認
・@により立会い確認を行うくい以外のくいの施工については、工事施工者の作成する自主検査記録、施工記録、工事写真等に係る書類確認により確認を行う。
・ただし、工事の施工中においても、工事施工者の実施する施工記録の確認方法等について適宜確認し、施工記録の確認等が適正に行われていないと判断される場合には、工事監理を適切に行ううえで必要な範囲で工事施工者に対し指摘し、必要に応じて建築主に報告等するとともに、適宜、立会いによる確認を行う。

5.設計図書どおりに施工できない場合の対応
工事監理者は、現場で支持層の位置の違いが判明するなど当初の計画どおりに施工することが妥当ではない状況が生じた場合(工事施工者からの質疑書による場合を含む。)、建築主への報告や、必要に応じた関係者間での対応策の協議等適切な対応を行うこととする。この場合の協議方法については、あらかじめ関係者間で確認し、共有を図っておくことが望ましい。

6.工事監理の状況の記録
工事監理者による工事監理の状況は、基礎ぐい工事が適切に施工されたかを確認するための判断材料の一つとして重要であり、建築基準法上の中間検査時において報告が求められることから、工事監理者は、基礎ぐい工事における工事監理の方法及びその結果について、適切に記録することとする。また、工事監理の状況について、建築主から求めがあった場合、工事監理の状況の記録を提出するなど適切に対応することとする。

基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン(案)に関する意見募集について

国土交通省では、下記1のとおり、基礎ぐい工事における工事監理ガイドラインを作成してい ます。
つきましては、下記の要領のとおり、広く国民の皆様の御意見を募集いたします。お寄せいただいた御意見につきましては、最終的な決定を行う際の参考とさせていただきます。
なお、御意見に対する個別の回答は致しかねますので、あらかじめ御了承願います。
1. 趣旨
横浜市の分譲マンションに端を発した基礎ぐい工事に係る問題の発生を受けて、国土交通省は、建築物の安全性確保や国民の不安払拭を図る観点から、平成27年10月に「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会(委員長:深尾精一 首都大学東京名誉教授)」を設置し、再発防止策等について専門的見地から検討いただき、12月25日に中間とりまとめを提出いただいたところです。
当該中間とりまとめにおいて、再発防止策のひとつとして、適切な施工管理を補完するための工事監理ガイドラインの策定が提言されました。
今般、上記提言を受け、基礎ぐい工事が設計図書どおりに適正に施工されることを確保するため、「工事監理ガイドライン」(平成21 年9月策定)に示されている考え方を踏まえたうえで、工事監理者が基礎ぐい工事における工事監理を行うにあたって留意すべき点を示すガイドライン(案)を作成しました。
2. 意見募集対象
基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン(案)
3. 資料入手方法
電子政府の総合窓口(e-Gov)の「パブリックコメント(意見募集中案件一覧)」欄に掲載するほか、国土交通省住宅局建築指導課において資料を配布します。
4. 意見募集期間
平成28年2月1日(月) 〜 平成28年2月27日(土)まで(必着)



No.44 ★受注者保護の施策についてB (7/24)
       

●最後に設計変更審査会についてお話ししたいと思います。設計変更は、施工に伴い当初設計通りで施工ができない事象が生じた場合に別の工法に変更したり、補助工法を追加するなどの協議を受注者から発注者に対して行い、発注者がその内容を検討して真に必要な場合は必要最小限の範囲で設計変更を認めます。
 従前のやり方では、受注者は協議書を作成しそれに対して発注者が検討をして変更を認めるかどうかの判断を行っていましたが、変更が認められない場合の理由の説明などが不十分な場合もあるなど、公平性や透明性に欠けることや、ワンデーレスポンスとも関連するのですが、協議の回答を得るまでに時間がかかるなど色々問題がありました。また不名誉な話なのですが、国交省の担当者が過度の設計変更(変更契約額の過大な増額)を認めて業者からその見返りを得るという事件があったことを受けて、特に設計変更に伴う金額の増減が大きい物については工事担当者以外の人間も交えて審査を行うという制度ができました。それが設計変更審査会です。

●設計変更審査会の参加者は、委員長に事務所の担当副所長を据え、その他の委員として事業対策官、工事品質管理官、発注担当課長、当該工事の主任監督員らが標準的な発注者側メンバーとして出席します。受注者側は監理技術者、現場代理人が基本となっています。
 開催は発注者若しくは受注者のどちらかの発議によって開催が出来るとなっていますが、現実問題として事務所の幹部が複数集まるため日程の調整が困難で必要な時期にすぐに開催できる保証はありません。その為協議事項1案件毎に開催する事は難しく、何件か協議事項が溜まってからの変更となり工事進捗の支障となる可能性もあります。結論が出る前に協議の内容で工事を進める事は可能であるが、審査会で設計変更が認められない場合は施工承諾として処理されることになり、その分の費用は受注者の持ち出しとなってしまう。
 他にも上記の様に発注者側の参加人数が多いので、受注者側の言いたい事を十分に発言できない、協議書に基づいて説明すれば問題はないのですが、協議書を基に審査会用の説明資料を編集するなど事務作業が余分に発生するなどの問題があります。

●設計変更審査会についても、まだまだ運営していく上で改善しなくてはならない点は色々あると思います。しかし、発注者が独断で設計変更の可否を決めるのと違って、発注者と受注者が膝をつき合わせて協議できる場が出来た事は大きな進歩だと思います。
 某地整の実施後アンケートの結果では、約90%の受注者が開催されて良かったという回答をしているようで一定の効果は見込めている様である。継続を求める意見も約60%であり、継続を求めないと言う意見の約5%を大きく上回る結果だそうです。
 手前味噌なアンケート結果ですが、少なくともこれらは受注者優位に働く施策であり、受注者側が有効に活用しなければ無くなってしまう可能性もあります。まだまだ問題点も多く活用しにくいかとは思いますが、活用して行く事で問題点が明確になり改善されていくので、過渡期の今は手間だけかかって効果が薄い場合もありますが、今後の業界のためにもなるべく活用する様にして下さい。

                                               (E)



No.43 ★受注者保護の施策についてA (7/23)
       

●引き続き、工事施工調整会議についての説明をしたいと思います。工事施工調整会議とは、受注者と発注者に加えて工事発注の元になった設計を行ったコンサルを交えた三者で行う会議です。工事完了後に何か問題が生じた時は、設計の不具合であっても施工前に照査を行って問題ないと判断した上で施工を行ったと言う事で、施工者も責任が追求されてしまうため、自己防衛のためにも照査の範囲を逸脱したところまで受注者で設計の確認を行っていたという経緯がありました。
改築工事など新規に構造物を作るものに関しては、設計手法がほぼ確立されており確認を行うのも比較的容易ですが、昨今の公共事業の主流になりつつある維持修繕といった内容の工事は設計手法が確立していると言い難く、設計思想によって考え方は多岐にわたります。よって、受注者の方で当該設計が妥当かどうかの判断を下すのは非常に難しく、そのための人員や時間の負担も大きいものがありました。

●上記の受注者に過度の照査を強いる問題は以前からあり、工事施工調整会議の制度が出来るまでは、設計図書の照査ガイドラインが策定され、発注者と受注者の責任区分を明確にし、受注者はその責任範囲の照査のみを行えばよいとされていた。
しかし、照査により設計上の問題点が明らかになった場合、その問題を解決しない事には工事着手が出来ません。今までは発注者が当該設計を行ったコンサルに差し戻して修正を依頼するという形で問題の解消を図ってきましたが、受注者が照査により発見した問題点を発注者が間に入って元設計コンサルとやりとりという図式になってしまうためどうしても解決するまでに時間がかかってしまい、工事着手がずれ込み適正な工期の確保ができないというケースが多くありました。
そこで、発注者を間に挟む従来の形式から、発注者、受注者、元設計コンサルの三者が一堂に会して、問題点を共有化しスムーズに解決を図ろうと実施される様になったのが工事施工調整会議です。

●まだ工事施工調整会議の運用が始まってから間もない事もあり、なかなか要領よく運営が出来ているとは言いがたいため、参加者への事後アンケートなどを行って改善を図っている所です。やり方は色々あると思いますが、受注者の照査結果で設計者に聞きたい点をまとめ会議の日までに設計者に回答を用意してもらい、その内容に関して会議当日に議論するという形が一番時間を有効活用できると方法だと思います。
以前にも書きましたが、良い物を造るためには色々な視点からの意見を取り入れる事が必要だと思います。この会議は、設計する者、施工する者、管理する者の三者が集まる会議であり有効に活用する事で公共物の品質向上を図れるので、特記仕様書には必要に応じて開催するという記述になっているかとは思いますが、せっかく制度が存在するので今後有効に活用される事を望みます。

                                               (E)



No.42 ★受注者保護の施策について@ (7/17)
       

●受注者保護の施策として工事の中に導入されているものが3つあります。数年前から実験的に行われており、昨年度あたりから全ての工事に標準的に導入されました。受注者保護と聞くと受注する立場からすると期待感を持ってしまうようなネーミングですが、その実あまり有効には機能していない様な気がします。
制度が始まって間もないので、認知度も低くなかなか有効活用されていないというのもありますが、まだまだ活用する上で改善すべき点が多いことなど問題の存在は否めません。これら3つの施策とは、ワンデーレスポンス、工事施工調整会議、設計変更審査会の3つで、特記仕様書を見れば記載されていると思います。

●順に概要を説明すると、まずワンデーレスポンスですが、1日で応答するという意味で、受注者からの協議事項に対して発注者がその日の内に何らかの回答を示すというものです。
現場を進める上で生じた諸問題に関して、施工方法の変更などを発注者に協議するのですが、当然、協議の回答が下りないと現場の施工が出来ません。なので、発注者の回答が遅れると現場が止まり工程に影響を与えるということがしばしばありました。そこで、受注者からの協議事項に対してその日の内に何らかの回答を出すことにより現場の工程に影響を与えない様にしようというのが目的で導入されました。
しかし、何らかの回答という所がミソです。協議事項に対する直接的な回答では無くても、いつまでに回答しますという回答もあり得ます。その期日になって再延期もできます。ということは、それを繰り返していると最終的な回答が得られるのは従前と大差無くなってしまいますので、これでは何の意味もありません。

●そもそも発注者としても、わざわざ勿体ぶって回答を引き延ばすようなことはしません。すぐ回答できるものは回答しますし、できないものは、それ相応の検討が必要なものです。そういった協議は設計変更を伴うような大きな内容であり発注担当課で総括監督員の決裁をもらう必要があるのですが、発注担当課は工事発注だけをしているわけではないので、業務のプライオリティーで後回しにされているケースも少なくありません。
これらは発注者側の都合なのですが、内容の理解しにくい協議書にも責任の一端はあります。資料の流れとして、受注者→(主任)監督員→発注担当課→総括監督員となっているのですが、発注担当課の担当者は協議内容を把握して総括監督員へ説明しに行かなくてはなりません。しかし、内容が理解しにくい書類の作りだと把握するのに時間がかかり、それ故に後回しにされたり、分からない所を監督員に問い合わせをしたりと余計な時間がかかります。それを避けるには、以前にも言いましたが現場を知らない誰が見ても分かり易い資料を作るしかありません。協議の回答を早く得るためにもご協力お願いします。

                                               (E)



No.41 ■施工者側に要求される

          出来形管理のプロセスC (7/14)
       

●出来形管理の大筋の流れとしては、前回までにお話ししたとおりです。まとめてみると以下の4つの項目に分けて説明する事ができます。
「計画」:まず何について管理する必要があるのか?土木工事施工管理基準に基づい
     て管理項目毎に測定頻度や規格値を抽出し、管理方法を策定する。
「実行」:計画に基づいて現場の施工に伴い管理項目の測定を行い、結果を取りまと
     める。
「評価」:取りまとめた結果を分析して、問題点の有無などを把握する。
「改善」:問題点がある場合は、原因を究明して問題解決を図るための対策を講じ
     る。
これら4つを循環して行う事で、出来形の向上を図るのが出来形管理です。これはPDCAサイクル呼ばれる管理手法であり、出来形管理のみならず管理業務を円滑に進める手法として様々な分野で活用されています。

●工事資料として形に残るのは、「計画」を記載した施工計画書とそれに基づき「実行」し、結果を取りまとめた出来形管理の関連資料のみです。出来形の評価も必要な出来形管理が所定の方法で行われているかどうか?測定結果が規格値を満たすものになっているかどうかで判断するので、「計画」、「実行」が重要な項目であり、「評価」、「改善」は必要に応じて付加的なものとして考えられている方も多いと思いますが、出来形管理としての肝は前者2つよりも後者の2つです。
 規格を満足さえしていれば検査は通ります。しかし、結果としてたまたま規格を満足したというのと、10回やろうが100回やろうが必ず規格を満足させるというのでは意味合いが違います。管理するとは後者の事を指します。その為には「評価」と「改善」が大事な要素です。同じ工事の中でPDCAを繰り返すのも当然有用ですが、それ以上に工事単位でのPDCAサイクルがもっと有用だと思います。過去の同種工事の経験、結果を「評価」して、次回の工事に「改善」として反映させていけばより良いものになっていくはずです。それを期待して入札資格に同種工事の経験の有無を謳っているのだと思います。
また、今は技術提案に代表される様に、施工者の技術力を評価する時代になってきています。適切な「評価」と「改善」を行うにはそれ相応の経験や技術力が必要であり、我々はそのための施工者の技術力を評価し買っているので、より良い物を造るためにも持っている経験や技術力を最大限活かすようにして下さい。

●このように発注者が施工者側に求める出来形管理のプロセスとしては、書類上は「計画」、「実行」までしか求めていない様に見えますが、1つの工事の中で、また工事と工事の間において「評価」、「改善」を行っていただく事を強く求めています。問題なく工事が終わってしまえば、見返したり反省したりする事は少ないと思いますが、うまく行った時にも何が良かったのか?を検証して次回工事に反映させていくことがより良い物造りに繋がっていくと思います。この点をお願いしてこのテーマを終わりたいと思います。

                                               (E)



No.40 ■施工者側に要求される

          出来形管理のプロセスB (7/1)
       

●前回までは、出来形管理の計画と準備についてお話ししました。今回は実際に管理を行う上での留意点などを書いていきたいと思います。基本的には土木工事施工管理基準の記載事項に則って測定し、規格値を満たしているかの管理を行っていけば問題ありません。よって、測定頻度や測定箇所など記載事項を厳守する必要がありますが、解釈の違いで間違えられる方も少なくありません。土木工事施工管理基準の記載事項が守られていないと、適切な出来形管理が出来ているとは言えないので、解釈には注意が必要です。

●例えば、舗装の厚みについては、1000uに1個の割でコアを採取して測定するとなっています。なので、全体の施工面積が7200uの時は、7200÷1000=7.2を繰り上げて8箇所コアを採取すれば良い。のですが、適当に施工延長を等間隔で割って8箇所コアを取れば良いというものではありません。「1000uに1個の割」という基準があるので、舗装した所が台形状の場所だとすると、延長で考えて等間隔で採取すると「1000uに1個の割」を満たさない場合が出てきます。
 そこで、正しい手法としては、8箇所採取するという計算まではOKですが、均等な面積毎に採取しなくてはならないので、全体の施工面積7200uを採取数の8箇所で割り戻して、900uに1箇所採取すれば良いと言う事になります。求積図などを用いて900uのブロックを8つ作りその中から1箇所ずつコアの採取を行えば測定基準を満たす事が出来ます。
 舗装構成の違うものが混在する場合、舗装修繕工事などで、切削オーバーレイ工と打換え工が混在する様な場合は、各々の舗装構成に対して上記の考え方を当てはめなくてはいけません。また施工箇所が点在する様な場合は、施工量が少なくとも箇所毎で採取する方が良いでしょう。請負者だけでその辺の判断をしかねる場合は、監督員と相談して決めておく方が良いと思います。特に段階確認が必要な不可視部分については、後から取り直しが出来ないので、事前に十分調整しておく必要があるでしょう。

●測定箇所や頻度がきちんと決まれば、後は地道に測定を重ねていき、その成果を資料としてまとめていくだけです。しかし、出来形管理は資料を作成するのが最終目的ではありません。もちろん管理した成果として資料を提出してもらわないといけないので資料作成も必要なのですが、今作っている構造物をいかに設計通りのものに施工するかというのが一番の目的です。規格値さえ満足していれば出来形管理としては問題ないのですが、より良い構造物を作ろうと思った時には、今までの施工で得られた出来形管理のデータを分析して、今後の施工に反映させる必要があります。
 本来はここまで求めるものではないのですが、得られたデータを分析して、不具合がある場合は、問題を究明して解決に導くという一連のプロセスは、出来形管理の経験論文を書く上では役立つ経験になると思うので、進んでやって頂く方が技術研鑽にも繋がるのではないかと思います。

                                               (E)



No.39 ■施工者側に要求される

          出来形管理のプロセスA (6/29)
       

●出来形管理は、まず自分の工事でどういう出来形管理を行う必要があるのかを抽出し、施工計画書にとりまとめると言いましたが、その際、さらに不可視部分になる管理項目や土木工事共通仕様書の段階確認項目にあたるものについては、必要な時期に監督職員に段階確認してもらう必要がありますので、段階確認項目として別途整理しておくと良いと思います。その方が段階確認願を提出するのを忘れたりしなくて済みます。
分かっていると事とは思いますが一応用語の説明をしておくと、『不可視部分』とは、工事完成後には目視出来ない部分の事です。例えば、基礎の根入れ長は土砂で埋め戻ししてしまうと目では見えません。しかし、構造物の安定を考えると必要な根入れ長が確保できているかどうかは重要な出来形管理項目となります。そこで埋め戻し前の目視で確認できる段階に監督員が現地に臨場して設計通りの形状で基礎が出来ているかどうか?所定の高さまで埋め戻しした時に設計以上の根入れ長が確保できるかどうか?などの確認を行うことを段階確認と言います。

●上記が、出来形管理の計画段階に当たる作業です。計画が出来てしまえば、あとは施工に伴って実際に管理していくだけなのですが、施工が始まってしまうと現場対応に追われるため、時間をかけて資料を作る時間はなかなかとれないと思うので、出来形管理に用いる表やグラフなどは事前に作成しておくと良いでしょう。様式集など雛形が出回っているものもありますが、よく使う工種のものなどは使いやすい様に自分で工夫して作られている方も居ます。
手際が良いと感心したのは、舗装修繕工事で舗装の厚みを管理する時、現道の場合は即日復旧が原則ですので、測定や取りまとめ作業をゆっくりおこなっている時間はありません。ゆっくりすれば施工効率が低下し、日当たりの施工面積が減るので、結果、余計に作業日数が必要となり不経済となります。よって、測定値から厚みを出して規格値と素早く比較して次の作業に移って良いかの判断を迅速に下していかなくてはなりません。
舗装の厚さの管理は歩車道境界ブロックなどの路肩付近にある固定された構造物を用いた下がり管理をするのが一般的だと思います。下がり管理は、各測点毎に構造物から旧舗装を切削後の路面までの距離(L1)を測定し、基層を舗設後に同様に距離(L2)を測定します。その差(L1−L2)が基層の厚みとなります。同様に表層を施工後・・・と繰り返していきます。単純な引き算ですが、読み値と管理値(厚み)とが違うので現地で電卓をたたいて管理値を出して規格値と比較してという手作業は意外と大変です。また、人間のすることなので計算ミスも生じかねません。

●そこで、小型のモバイルパソコンに事前にエクセルで表を作っておき、現地で測定した読み値をその場で入力していければ自動で厚みが計算されて、管理基準の規格値を満足しているかどうかの判定もしてくるというのを作っている人が居ました。規格値との偏差からばらつきのグラフ化も自動でできるので、その表とグラフを打ち出せば、出来形管理の資料はできあがりです。非常に便利だと思いました。
皆さん技術者なので、この辺の工夫を考えるのは得意だと思います。1回作っておけば繰り返し使えますし、仕事の省力化もできるので、従来通りのやり方を踏襲するのではなく工夫できる所がないか見直してみるのも良いかもしれません。

                                               (E)



No.38 ■施工者側に要求される

          出来形管理のプロセス@ (6/26)
       

●出来形管理は施工管理の項目のうちの1つであり工事における重要な管理項目です。土木施工管理技士の実地試験においても経験を問われる問題が過去に何度も(確か去年度の1級もそうだったと思います。)出題されている事からも施工管理項目における出来形管理のウエイトの高さが伺えます。
 既に土木施工管理技士の資格を得て、実際に現場代理人や監理技術者として活躍されている方にとっては今更と思う話題かも知れませんが、これから土木施工管理技士を目指す方は一度目を通していただけるとだいたいの流れが掴めると思います。

●まずは、出来形管理とは何か?についてですが、文字通り出来上がる成果物の形を管理すると言う事であり、設計図面通りの形状で設計通りの位置に成果物を施工するための様々な管理を指します。どのような管理項目があるのかについては、工種事に一般的な定めがあり、各地方整備局で監修されている土木工事施工管理基準という本に記載されています。この本には、出来形管理の他、品質管理と写真管理の基準も記載されています。
 例えば、分かりやすい所で視線誘導標(デリネータ)の管理基準を見てみると、路面から反射体までの高さが規定されています。規格値として設計値±30mmと規定されていますので、仮に設計値が900mmだとすると路面から反射体までの高さが870mm〜930mmの間に収まっていないと規格値を満たさないという事になり補修する必要が出てきます。
 測定基準は、10本毎に1箇所かつ最低2箇所となっていますので、32本設置した場合は4箇所(基準を満足する必要があるので、四捨五入ではなく繰り上げです。)、8本の場合は本数から行くと1箇所なのですが、最低2箇所必要なので、2箇所となります。どこを測定するのかについては、請負者の任意ですが、検査の際に検査官が確認した時に規格値を満たしていなければ検査に合格しないので、自分で管理の対象として測定した2本だけが規格値を満足していればよいというものではありません。測定基準は測定して記録に残す必要がある最低ラインを示しているだけです。

●基本的には、土木工事施工管理基準に記載されている項目に該当する工事を現場で行う際に出来形管理が必要になってきます。ですので、最初にやるべきことは、これから行う工事の内容を鑑みて、どのような出来形管理が必要なのかを土木工事施工管理基準から抽出することです。該当する管理項目の確認頻度や規格値を整理して、施工計画書に反映させます。施工計画書はその工事の教科書のようなものですから、実施しなくてはならない事柄は全て反映させておく必要があります。
 標準的な工種については土木工事施工管理基準で網羅されていますが、実際に現場で行う全ての作業について記載されている訳ではありません。しかし、記載のないものについては管理しなくて良いという事にはなりません。似た様な工種がある場合はそこから準用する方法がありますが、準用できる様な同種の工種が無い様な場合についてはどうするのかというと、監督員と請負者とで協議して独自に測定頻度や規格値を設定します。ですので、該当する作業がある場合は監督員に相談する様にして下さい。

                                               (E)



No.37 ◆発注者側監督職員との付き合い方F (6/24)
       

●色々と取り留めのない事を書いてきましたが、まとめると、まず誰に対しても公平な対応をお願いしたいと思います。工事を進めるに当たって立場の違う色々な人間が関わって来ますが、信用・信頼されるには相手によって対応を変えるというのは良くないと思いますし、人によって対応を変えているとみんなで一丸となって工事を進めようという姿勢にも影響してくると思います。ですので、発注者に対してということで特別に気を遣っていただく必要は全くありません。

●次に提出する書類には必ず目を通す様にお願いします。公共工事にかかる書類は量が多いのでいちいち目を通すのは大変かと思いますが、何度も間違いがあるまま提出されると、監督する側としては仕事に対する姿勢を疑ってしまいます。単純な文章の誤記や脱漏は人間のすることなので見落としてしまう事はありますが、必要な資料が抜けているや記載しなければならない事柄が記載されていないなどについては、目を通すだけで分かるはずなので、そういう事は決して無い様にお願いします。
 現場代理人が自ら書類の作成を行っている場合は、作成後に目を通すことができますが、(出来れば提出前に他の人にチェックしてもらう方がより望ましいですが)書類作成の為にスタッフをつけている場合の方が、現場代理人が忙しくて書類に目を通さずに提出してしまうというケースが多いです。

●続いては、施工者の意見は積極的に発言するようにしてください。設計コンサルの成果を基に工事発注を行っていますが、設計する立場と施工する立場の違いからか、合理的な設計ではあるが、施工が非常に困難な設計というも多数存在します。そういう場合、当初設計の性能を損なわずに施工性を向上できるような、施工のスペシャリストとしての意見が大変貴重になってきます。
 必ずしも当初設計が一番良い方法とは言い切れませんので、より良い方法があればそれを積極的に提案してもらう事で、工事の品質の向上に繋がると思います。

●最後に、発注者と出来るだけ情報交換をするようにお願いします。発注者と受注者で認識に違いがあるというのは望ましくない事ですし、問題の早期解決を図るには発注者と受注者が共に動かないといけない事がほとんどなので、何か問題が起これば抱え込まずに報告や相談をするようにして下さい。あまり音沙汰がないと心配になるので、順調なら順調と言ってくれるだけで良いです。
こういった情報交換については、発注者に対してだけでなく地元に対しても大事です。多くの人は、工事の内容がわからないので不安になり少しの事でも過度に反応してしまいがちですが、誰がどういう目的でどういう事をするのか、また工事に伴い騒音振動が発生するならその旨を事前に伝えておけば、安心感を与えられると思います。

とりあえず、私の考え得る現場や発注者との付き合い方というか、心構えとしては以上です。冒頭でも言いましたように人それぞれなので、必ずしも有効な方法とは言い切れないのが心苦しいですが、ある程度は参考にしてもらえればありがたいです。

                                               (E)



No.36 ◆発注者側監督職員との付き合い方E (6/22)
       

●皆さんが現場を持った時には監督官署へどのくらいの頻度で顔を出しに行かれるでしょうか?工程の打合せに週1回くらいでしょうか?現場と監督官署の距離にもよるとは思いますが、出来るだけ顔を出していただく方が監督する立場としては有り難いです。
監督員の方が現場へ来たら良いという意見も聞こえてきそうですが、我々も段階確認や立会に出来るだけ行く様には心がけています。しかし、年末・年度末の繁忙期になってくると、どうしても監督する工事件数も増えてきて1つの現場へ頻繁に足を運ぶという事が出来なくなります。
なぜ、こんなことを言うかというと、日々刻々と変わる現場の情報を出来るだけ頭に入れておきたいからです。工事は現場を良好な出来形・品質で仕上げるのが目的ですから、目的の遂行に支障となる問題があれば解決しなくてはなりません。そのためには懸案事項などは出来るだけ発注者と受注者で情報を共有する方が良いからです。

●現場の進捗状況を聞いていれば、計画より遅れているのかなどの確認もできますし、遅れの理由のよっては工期延期を行う事も可能なので、そういった相談も出来るのですが、あまり監督官署に顔を出していただけないと月1回の工事進捗報告のタイミングで出来高率を確認するしかないので、後手に回ってしまう可能性があります。
ご存じかとは思いますが、工期延期をするには3通りの方法がありますが、どれも発注者と受注者との協議によるので、懸案事項を共有しておいた方がスムーズに話が進みます。
1つ目は中間変更による工期の延期、追加施工や不測の事態による対策工の追加などにより当初設計よりも作業量が増えた場合、中間変更を行い増加した作業量に見合う工期を延期する方法。
2つ目は一部一時中止による工期の延期、これは不測の事態により作業が出来ない状況になった場合、作業が出来ない箇所の工事を一時的に中止するもので、中止になった要因が解消されたら工事の再開手続を行い、原則、中止した期間分の工期を延長するものです。
ですので、工事ができないと分かった時点から中止の手続きが完了するまでに遅れがあると、実際に作業できなかった日数より工期延期できる日数が減ってしまいます。
3つ目はあまり使う事が無いのですが、契約書の21条に請負者の請求による工期の延長というものがあります。天候不順や関連工事との調整などによって工事進捗に支障を来した場合は請求により延長する事ができるとなっています。
しかし、天候不順は通常の降雨・降雪による不稼働日数は当初の工期設定で考慮していますので、例年と比べて明確に天候不順だと言えないと難しいですし、関連工事との調整もどんな工事でも少なからず調整事項はあるので、どこまでが請求を受け付けて、どこまでがダメなのか?という線引きが非常に難しいため、この方法を用いた延期というのは私の知る限りでは1例しかありません。
それは、ちょうど2年前頃になりますが、北京五輪の影響などで鋼材の日本国内の供給量が極端に減った時期があったと思います。その時に鋼橋の補修工事で鋼材の手配が出来ないとの理由で延期した事が一度だけあります。受注者の責任ではないので最終的には工期延期になりましたが、鋼材の供給量が低下しているのは入札前にも分かっていた事なので、手配できる見込みがあって落札したのでは?など色々な議論が行われました。請負者の請求によるものは一度簡単に認めてしまうとキリがないので非常に審査が厳しいです。

●このように、工期延期するにも発注者・受注者共に色々な事務的作業が伴います。慌ててそういった作業を行わなくて良いように常日頃から共通の認識を持っておくことが大事ですので、出来るだけ監督官署には顔を出して現在の状況や問題点や心配事は無いかなどを報告しに来ていただけるとありがたいです。

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No.35 ◆発注者側監督職員との付き合い方D (6/17)
       

●前回、積極的に色々な案を出して下さいという風に申し上げましたが、こういったプレゼン能力と言いましょうか、提案力と言うのは、特に昨今は土木技術者にも必要なスキルになって来ていると思います。総合評価方式による技術提案も文字通り発注者側に提案しアピールする必要がありますし、現場で監督員とやりとりする場合においても提案力は大事だと思います。
 打合せの中でも、積極的にああしたい、こうしたいという意見や提案をして貰う方が、それをたたき台として検討を進める事が出来ますし、ある程度、問題の内容を吟味した上で根拠があっての提案であるはずなので、何も無い所から話をスタートする事に比べるとスムーズに結論が出ると思います。ですので、そういう現場代理人は提案力のある人だな
という風に判断できます。

●提案力のある人、ない人をどういう風に判断しているのか?については、何の支障も問題もなく設計通りに工事が進んでいる時にはわかりません。しかし、設計変更協議の必要があるような問題が生じた時にはよく分かってきます。
 典型的に提案力が無いなと思う人は、「こういう問題が起きました、どうしましょう?」と言って来られる方です。問題が発生した場合は、まず一番に報告はして頂かなくてはならないのですが、すぐに解決のための主導権を発注者側に丸投げするのはどうかと思います。もちろん最終的な判断は発注者の方で行うのですが、解決に向けて何をするのか?全て発注者の指示を仰ぐというのはやはり提案力に欠けると言わざるを得ません。
 逆に提案力があるなと思う人は、問題が発生した時に発注者側に丸投げするのではなく、どのように対処したいかを提案してくれる人です。前回の協議書の作り方の繰り返しになりますが、問題を解決するためにどういう方法が考えられて、その中から経済性などを考慮して最良と思われる方法を提案していただけると良いと思います。
1つだけ言うと、自分で解決しようと思う人ほど報告と提案を同時に行おうとして、第一報が遅れる場合があります。何か問題(通常と違う事)が発生した場合はまず報告して下さい。そこだけは留意して下さい。

●問題が起きた時に全て自分だけで対応しようとするとやはり無理があると思います。自分の専門分野、そうでない分野があると思いますし、起きる問題がいつも自分の専門分野で起こるとは限りません。そういう時は会社のバックアップ体制が重要となってきます。
現場の事は代理人へ任せきりという会社もあるとは思います。そういう所ほど提案が無く発注者の指示待ちになる事が多いです。工事を請け負っているのは現場代理人個人ではなく会社ですので、難しい問題に直面したときは会社を巻き込んで解決に向けた提案を積極的にするようにお願いします。

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No.34 ◆発注者側監督職員との付き合い方C (6/10)
       

●提出書類の中身をよく確認して下さいと言う事を前回言いましたが、公共事業にかかる工事の提出資料はそのボリュームが多く目を通すのも一苦労だと思います。書類の多さは概ね皆さんに不評です。工事書類の簡素化やペーパーレス化という取り組みも行われてはいますが、結局は検査時に確認できる資料を用意する必要があり書類を作成しなくてはいけないという事に変わりはないため、取り組みによる成果はあまり見られていないのが実情です。
書類なんかより現場をきっちりやっておけば問題ないと思われている現場代理人も中には居ますが、工事成績評点の所でお話ししたとおり評価の半分以上は書類によるものです。また、現場の品質などがきちんと基準を満たしているかどうかの確認も目視だけではわからないので、書類で整理しておく必要があります。よって、現場と書類は切っても切り離せない間柄なので、書類もきっちり作成していただきたいと思います。
そこで今日は、担当した工事の現場代理人に必ずと言って良いほど指導する書類の作り方についてお話したいと思います。

●書類で一番大事な要素はわかりやすさです。特に設計変更にかかる協議書については、実際現場に携わってない事務所の人間が目を通す資料なので、あまり予備知識がなくても内容が伝わるような書類作りが必要になってきます。
設計変更は現場を進める上で、何らかの問題があり当初設計通りの施工が出来ない場合に行います。例えば、床堀した箇所に当初想定していなかった湧水が生じて構造物の施工ができないというような場合、構造物を施工するために湧水をポンプで排出する水替え工を追加施工すると言ったものです。
事務所の発注担当者に設計変更の同意を得るためには、変更する必要性や対処法の妥当性がわかる資料にしなくてはいけません。その為には、まず当初設計通り施工できない原因を明確にしないといけません。上記の例の場合は、当初想定していなかった湧水が発生したと言うものです。
次に対処法についてですが、すぐに結論へ持って行ったのでは妥当性の説明に欠けます。考え得る対策法を抽出してその中から、経済性や施工性、安全性、周辺環境への影響を考慮して一番優れた方法を選定したという比較検討が分かり易いと思います。上記の例の場合は、水替え工の他、ウェルポイントなど周囲の地下水位を下げて湧水の発生を抑制する方法や構造物を現場打ちからプレキャスト製品に変更し、型枠の施工や養生の必要性を無くしてしまうという方法もあります。
なるべく当初通りで変更が無い方が良いと思っている方も居ると思いますが、必ずしも、当初設計通りに施工しなくてはいけないというものではありません。何らかの目的を達成するために工事を行うのであって、その目的を達成出来るのであれば当初設計に拘る必要はありません。柔軟な発想で色々な案を出して下さい。当初設計は設計コンサルと発注者が吟味して決定したものですが、違う視点からの色々な意見を取り入れる方が良い成果物を作るのには大事だと思っています。

                                               (E)



No.33 ◆発注者側監督職員との付き合い方B (6/8)
       

●監督職員との付き合い方の心構えとしては、前回まででお話しした様に、発注者に対しては必要以上に気を遣って頂く必要はありません。ここで、気を遣い過ぎたがために起きたと思われる失敗事例を1つご紹介したいと思います。

●コンクリートの受入試験の立会に行った時の話です。ちなみに余談ですが土木施工管理を受検される方に復習です。受入試験項目を4〜5項目挙げて下さい。
(答え:スランプ試験、空気量試験、強度試験、塩化物量試験。規定されている場合は単位水量試験も行う。試験頻度や判定方法などについては土木工事施工管理基準に記載されていますので、自信のない方はよく確認しておいて下さい。)
話を戻しまして、現地での受入試験の立会に行ったのですが、スランプ試験、空気量試験、強度試験用の供試体の作成と手慣れた人がやっても大体10〜15分くらいかかる作業になります。その現場の代理人としては、監督職員を待たせるのは悪いと思ったのでしょうか、約束の時間に現場へ到着した時には、既に各種試験を完了しておりスランプ、空気量に関しては、読み値を読むだけの状態になっていました。

●日常茶飯事の事なので、間違いないとは思いますが、試験方法が正規の手順に則ったものであるか?なども重要な確認項目です。コンクリート打設量の多い工事では、毎回立会もできないので、最初に試験手順を確認して問題がなければ、以後は自主管理してもらい、結果だけ報告してもらいます。しかし、最初から手順の省略をされると確認のしようがなく自主管理で任せる事ができません。気を遣って頂くのはありがたいですが、仕事として確認する必要があるものは、きちんと確認しなくてはいけないのでお願いします。

●次に、こちらからの指摘事項などについては改善する様にお願いします。かと言って、何もかも言われるがままというのも困ります。
これも悪い事例なのですが、言われた事しかしない方がいます。発注者で書類の確認を行った時に同じような間違いが続く様だと、見つけた箇所は指摘しますが、他の部分は自分で確認して修正して下さい。と言う事があります。しかし、再提出された資料を見てみると指摘した箇所だけしか直っていないという事があります。
監督員は添削者ではありません。提出する書類は提出する前にちゃんと目を通すようにして下さい。特に材料確認などはメーカーからの資料に鑑を添付して出すだけと言うのが多いです。こちらで中身を確認すると、仕様書に規定している規格を満たしているかどうかわかる記載がない。という事が良くあります。きちんと提出する書類を確認するというのは当然のことです。これがしっかりなされていないというのは仕事に対する姿勢の現れだと思うので、あまりひどい場合は信頼関係を損ないかねません。心当たりのある方は以後注意して下さい。

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No.32 ◆発注者側監督職員との付き合い方A (6/4)
       

●前回書きました様に、監督員は人それぞれです。なので、ここから書く内容は非常に主観的な話になってしまうかも知れません。客観的に書いてはいるつもりですが、必ずしも全ての監督員に当てはまるという話ではありません。そういう時は臨機応変な対応でお願いします。

●まず言っておきたいのは、発注者との関係についてはそんなに難しく考える必要はありません。必ずしも愛想良くする必要も気を遣う必要もありません。昨今は、公務員倫理規定が厳しくなり発注者と受注者間で関係性を疑われる様な行いは厳禁とされていますので、あらぬ疑いを招かぬ様に進んで受注者と親しくなろうとしない発注者も多いです。ですので、無理に親しくなろうという様な事はしなくて良いと思います。
 良好な関係=親しい関係というのは、間違いではないと思いますが、仕事の場においての良好な関係とは、親しさよりも信頼関係だと思います。お願いした事をやってくれない、期限を守らない、間違い箇所を指摘しても直ってこないなどを繰り返しされると、だんだん信頼度が下がっていきます。

●発注者と受注者とは立場は違いますが、ひとつの工事を完成に向けて作業を行うという目的は同じなので協力しなくてはいけません。監督員は現場への手出しは出来ませんが、書類については少しでも良い評点が取れる様にアドバイスは出来ます。
 しかし、なかなか素直にアドバイスを受け入れてくれない方も居ます。自分のやり方にこだわりを持っている人も居ますし、他の工事の時に受けた指摘事項を引き合いに出してくる人も居ます。前回コラムに書いたとおり、発注者が変わればやり方も変わります。「郷に入っては郷に従え」ではありませんが、その工事はその工事の監督員が一番詳しいので、監督員の言う事を信じてみて下さい。
 我々としても自分の担当工事が他の工事と比べて評点が悪いとなると監督能力を疑われかねませんので、出来るだけ良い評点が取れる様にしたいと思っており、指導も惜しみませんが、その為には受注者の協力が何より必要なのです。

●あとは、分からない事があったらすぐ相談して下さい。忙しい時に何でもかんでも聞かれると、ちょっとは自分で考えろ。と思ってしまわなくもないですが(監督員も人間ですので。)期限ギリギリに要求していたものと違うものを出されて修正にバタバタする事を考えると、事前にちゃんと聞いてくれた方がお互いに助かります。
書類の作り方などに関しては、私の所では過去に竣工した同種工事の資料を閲覧できるようにしています。施工計画書の書き方など、工事成績評定の所でも話した内容を踏襲した資料なので大変参考になったという声を良く聞きます。参考にした所に自社の工夫を加えてより完璧なものにして、次の手本になるような資料作りを目指してもらっています。

                                               (E)



○読者の方からの声 (6/2)

「コラム拝見しておりました。大変参考になりました、有難うございます。又、土木の試験の内容(品質管理など)とも重なり、出題内容が実際の現場と実に密接した内容であることを改めて認識できました。今年1級土木を受験しますが、試験勉強に何か今まで以上にやる気がでてきました。」



No.31 ◆発注者側監督職員との付き合い方@ (6/1)
       

●前回までのテーマに関連する所ですが、現場でのやりとりや所内での書類のやりとりなどについての留意すべき点や監督員がどういう所に着目して監督を行っているかについて、聞きたいと言う要望がありましたので、エピソードを交えてお話ししたいと思います。

●監督員と請負者とは工事期間中はずっと付き合って行かなくてはいけない間柄です。ですので、お互い良好な関係を築きたいと思っていると思います。特に請負者としては、発注者と受注者とは契約上は対等な関係と言え、最終的には評価する側とされる側という立場関係にある事を考えると、発注者との人間関係には特に気を配っているのではないかと思います。
 前回のテーマでも言いましたが、主任監督員の評価が全体の評価に与える影響力は大きいです。総括監督員は主任監督員の報告資料に基づいて評価をしますし、工事検査官にしても1日の検査だけで評価するのが難しい場合は、主任監督員の評価を参考にする場合もあります。そういう意味では、主任監督員から高い評価を得る事が工事成績評点で高得点を獲る方法と言えなくもありません。
 よって、少しでも高い評価を得るために監督員と上手く付き合っていきたい。その為の方法について知りたいということで、今回のテーマについての要望があったものだと思います。公務員という人種は、自分で言うのも何ですが変わった人も多いので、そういう人に当たって行き詰まりを感じた結果の質問かも知れませんが・・。

●冒頭から否定的な事を言いますが、完璧な方法というものは存在しません。工事の数だけ監督員が居ますし、人もそれぞれなので、このように対応すれば間違いないという事は言い切れません。発注者が変わればやり方も変わります。同じ国交省でも整備局毎で違いますし、同じ整備局でも事務所毎、同じ事務所でも担当者毎に少しずつ違ってきます。ですので、現場と一緒で臨機応変に対応していくしかありません。
 また監督員には、評価者である主任監督員の他に、実際に現地や書類の対応を行う現場技術員がいます。現場技術員は職員ではなく、監督業務の補助を外部委託されたコンサルなどから来ている人間です。また、職員が監督員としてつく場合もあります。
 と言う訳なので、通常の対応については、評価者である主任監督員が直接代理人などとやりとりする事はあまりありません。監督員若しくは現場技術員とのやりとりとなります。
しかし、主任監督員は、監督員や現場技術員とのやりとりを見てない様で見ていますし、評価に際しては、監督員や現場技術員の意見を参照したりもするので、誰に対しても誠実な対応をすることが、まず大事だと思います。たまに居るのですが、職員と現場技術員というような線引きをして対応を変える様な人は心証が悪いのは言うまでもありません。

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No.30 ■工事成績評点についてL  (5/28)
       

●最後に今まで各種検査に立ち会った経験から、どの検査官も必ず確認する内容、受検の際に準備しておく方が良いもの等を書いて、今回のテーマを締めたいと思います。

●工事検査官は検査の際に土木工事検査メモと言って、考査項目別運用表の内容にリンクした、確認する項目などが記されたマニュアルを持って検査に臨みます。これは内部資料なので公表はされていませんが、結局、評点をつけるのは考査項目別運用表なので、こちらをしっかり押さえておけば問題はないです。
 昨年度の改訂で新たに評価項目に入った内容で必ず聞かれるのが、下請から引き渡しを受ける際に検査を行っているか?それを書面で確認できるか?と言うものです。昔から付き合いのある下請との間では、きちんと書類を交わしていないという場合も少なく無いようですが、改訂により評価項目になっていますので、きちんと書類を取り交わす様にして下さい。下請との契約に関わる資料なので、提出義務はありませんが検査で聞かれた際は提示できる準備をしておきましょう。

●あと、出来形や品質について、社内の管理基準で管理がされているか?という評価項目があります。施工計画書にも「社内基準に基づいて施工管理基準にある規格値の80%で管理する。」など書かれていることと思いますが、これを満たせなかった場合どう対処するかまで記載しておかないと管理とは呼べません。80%で管理するではただの目標です。
80%を超えた場合は、施工管理基準の規格値以内なら取り壊し等は行わないが原因を究明して対策を行う。対策を行い80%以内で落ち着くまでは、測定頻度を基準の2倍にする。と言う様に80%以内を確保するための対策まで決めてあってはじめて管理していると言えるので、今後、施工計画書を作る場合には参考にして下さい。

●また、不可視部分については、写真でしか確認ができないので、写真の整理はきちんとしておきましょう。提出資料としては写真管理基準に定められている分を満足していれば問題ないのですが、上記の不可視部分の確認や施工手順が施工計画書通りになっているかどうかの確認を写真で順番に見せて下さいという場合もあるので、工種毎に施工順序の順でまとめておくようにしておくと良いと思います。
デジカメなので整理するのは比較的簡単だと思います。(後でまとめてやると量が多いので大変かもしれませんが・・)また、写真全部の打ち出しを用意する必要はありません。パソコンを用意してデータとして整理しておけば良いです。その方が画面上で拡大なども出来るので、写真だと黒板の文字が見にくいといった時にも対処が可能です。

●以上で、工事成績評点についての話題は終わりたいと思います。長く書きましたが、まだまだ十分に説明しきれていない所もあります。分かりにくい所や質問などありましたら、また補足させていただきますので、よろしくお願いします。

                                               (E)



No.29 ■工事成績評点についてK  (5/27)
       

●前回は書類検査の留意点についてお話ししましたので、今日は現地検査での留意点をお話しようと思います。現地検査では、設計値に対して出来形に過不足がないか実際に工事目的物の寸法を測定して、規格値に収まっているかなどの確認を行います。工事検査官の評価では、この出来形・品質・出来ばえに関する配点のウエイトが大きいので、現地検査ではきちんとした対応を行い評価につなげたいところです。

●とは言っても、現地での測定は確認程度の内容です。事前に出来形管理で施工者が実測し、設計値に対して実測値がいくらで管理基準の規格値を満足しているか?ばらつきがどの程度なのか?についての資料を作成していると思います。その資料の確認の意味合いで、検査官が指定する場所を実測して、施工者が測定していた値と大きな差がないかどうかの確認を行います。
 ここで仮に大きく差があるようだと、出来形管理の資料自体の信憑性を揺るがしかねません。ですので、間違いの無い様に測定しなくてはいけません。よくあるのは、歩道の幅員などで縁石を含む、含まないで数値が変わってきます。どちらの数値で管理しているのかを把握していないと間違える可能性があります。それを防ぐためには、出来形管理の資料を作る際に測定した人間が検査の際も測定を行うのが良いと思います。そうすれば、一度やっている事なので間違えるリスクは少なくなりますし、目盛りのあて方や巻き尺の張り具合など個人の癖が多少出る場合もありますが、それによる誤差も生じにくくなります。

●品質に関しては、コンクリートの圧縮強度などはシュミットハンマーで簡単に測定できますが、アスファルトの密度などほとんどのものは現地で簡易に測定することが困難なため、現地検査ではほとんど確認される事はないと思います。その分、資料で評価が下されますので、考査項目別運用表の該当する工種の部分を見て、評価項目を確認できる内容に資料を仕上げておく必要があります。工事によっては複数工種が該当する場合がありますが、基本的には工事費ベースで一番ウエイトが大きい工種で評価します。しかし、主工種が絞れない時は、複数工種に対して評価を行い加重平均する場合もあります。請負者で主工種の判断が難しい場合は、主任監督員に聞けば教えてくれると思います。

●最後に出来ばえについてですが、これは施工にかかってきますので、日々丁寧な仕事を心がけてもらうしかありません。検査に先立ち自主的にコンクリート表面に出来た気泡跡をモルタルで補修されたりする方が居ますが、かえって補修箇所が白く目立ち見映えが悪かったりするので、発注者側からの指示が無い限り補修はしないで下さい。下手すると不具合箇所の隠蔽という風にも捉えられかねませんので、現時点での技術力を評価してもらうということで、ありのままの姿で受検するようにして下さい。

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No.28 ■工事成績評点についてJ  (5/25)
       

●最後に工事検査官の評価についてお話しして、今回のテーマは終了したいと思います。工事検査官は各検査前に支出担当官からの検査命令を受けて決定されるため、工事途上では誰がその任にあたるか分かりません。よって、検査官本人も命令を受けるまでは分からないので、検査官の評価は検査の際の一発勝負で決まるということになります。
 工事検査官は、本官工事及び低入札工事の場合は各地方整備局に在籍し、工事検査を主務としている工事検査官(役職名)が主に担当します。分任官工事の場合は副所長や主任監督員を務める、建設監督官や出張所長が担当する事が多いです。年度末など複数の検査が立て込む時期は、人手が足りないためその他の役職の人間が担当する事もありますが、基本的には普段の業務で評点を点ける事の多く、勝手の分かっている人間が担当する事がほとんどです。

工事検査官の評価項目としては、施工状況の中の施工管理及び出来形及び出来ばえに関する項目、出来形管理、品質管理、出来ばえがあります。工事検査は、特に規模が大きい工事を除いては、1日で工事関係書類の確認及び現地での出来形や出来ばえの確認を行いますので、時間的余裕はそんなに多くはありません。よって、出来るだけスムーズに検査が進むように協力をお願いします。
 進行に関して留意して頂きたい事としては、検査官の質問にはその質問の意図に沿って簡潔に回答するようにして下さい。現場を進める上での苦労話もあるかとは思いますし、困難を克服したというアピールをしたい気持ちがあるのも理解できますが、質問の回答以外に長々と話をされるのは、検査官の性格にも依りますが嫌う人もいます。
 また、提示を求められた資料がすぐに出て来ないというのも時間のロスはもちろんのこと、把握が出来ていない準備不足という印象を与えてしまうので心証が悪くなることが懸念されます。工事検査官の評価にかかる考査項目別運用表の評価項目を見てもらえば分かると思いますが、「〜を確認できる。」という項目がほとんどです。資料がきちん整理されているかどうかは評価の対象ではありません。
もちろんきちんと整理がされていてどこに何があるか分かっているのが一番ですが、整理の途中でどこに何があるのかわからないという状況よりは、整理がされてなくても言われた書類をすぐ出せる体制を整えておく方が評価に繋がります。特に工期が年度末の場合は、現場を仕上げるのに手一杯で資料を整理する時間がなくてきちんと整理できないというケースが多いと思うので注意をお願いします。

受検の際の留意点は以上です。検査官から質問があった時は、質問の意図に沿って簡潔に回答する事。資料などの提示を求められた場合はバタバタすることなくすぐ用意できる体制を整えておく事が大事です。

                                               (E)



No.27 ■工事成績評点についてI  (5/24)
       

●続いて、総括監督員の評価についてお話ししていきたいと思います。総括監督員とは、工事発注官署の事務所長などがこれに当たります。現場代理人や監理技術者が直接やりとりする相手ではないので、挨拶以外ではほとんどの場合会う機会も無いかも知れません。
ほとんどと書いたのは、後述する事故などを起こした際のペナルティーで、口頭注意や文書注意を行うのが事務所長だからです。そういう意味では、会わない方が良い相手と言えるかも知れません。

●総括監督員にしても、官署の規模にもよりますが、年間100件以上の工事を担当する必要があるため、個別の工事1件1件を見て回って評価を下すのははっきり言って難しいです。よって、工程管理や安全対策といった施工状況にかかる評価項目もありますが、配点は最高2〜3点と少ない配点にしかなっていません。
評価は主任監督員の評価や報告を参考につけているようなので、主任監督員の評価に準じた評価がつけられているように思います。従って、高評価を得るための対策としては主任監督員の所で書いた事項を実行してもらうのが、ここでの評価にも繋がると思います。
 総括監督員の評価で配点が大きいのが「工事特性」です。工事成績評定の改正の所で触れましたが、改正により、発注者側の判断により総括監督員が評価する事になりました。評価項目や評価基準は考査項目別運用表にある通りです。よって、該当する場合は機械的に評価が加わっていくために、ここの評価は同じ内容の工事ならば誰が施工しようと同じ評価になります。従って、ここについては対策のしようがありません。
 最後の加点項目として、地域への貢献等というものがあります。工事箇所の近隣住民とトラブルなく工事を完成させるのは基より、地域へ積極的に貢献したと認められる場合に加点されます。何をもって積極的か?は判断が難しい所ですが、苦情があって対応したというよりは、問題になりそうな箇所を常に点検し見つけて自発的に対応するのが好ましいと思います。また対処できる内容にせよできない内容にせよ真摯に対応する事が何よりだと思います。官署に苦情が入るような場合は内容にもよりますが評価されにくくなります。

●最後に「減点項目」についてですが、事故や公衆災害を起こした場合や反社会的や不誠実な行為、法律などに抵触するような行為を行った場合は、その内容に応じてペナルティーと評点の減点がなされます。措置内容と減点数は考査項目別運用表に記載されています。
ここでの減点は、総括監督員の管轄になっていますが、加点と違って評価割合は考慮されません。加点の場合は2割の傾斜がかかるため、+5点でも実質評点に影響するのは5×0.2=1点ですが、減点については傾斜がかかりません。−5点は−5点です。
 ここで大きな減点がされる様だと、評点が低くなってしまうので今後の入札に影響が出てくる事も懸念されます。好んで事故を起こす事は無いのですが、工事をやる以上は事故が起きる可能性は否定できません。十分に対策を取っていても起きる時は起きてしまいます。しかし、無対策で事故が起きるのと、十分に対策を取っていて起こってしまった場合とでは同じ事故を起こしても、過失の割合が違うのでペナルティーの度合いは違ってきます。ですので、事故対策は十分に行うようにして下さい。評点より何よりも自分達の命を守るためのものですのでキチンと対策される事を望みます。

                                               (E)



No.26 ■工事成績評点についてH  (5/19)
       

●創意工夫で効率よく加点を得るためには、「新技術」の活用を積極的に図るべきだと思います。「新技術」とは、NETISに登録されている技術の総称で、条件を満たしていれば活用して調査に協力するだけで漏れなく点数が得られるので、評価されるかどうか不確かな他の創意工夫と違って、確実に点を稼ぐことができます。
また、他の創意工夫は、技術提案との重複が認められておらず、技術提案で挙げた内容については、創意工夫としては挙げられないため、どちらか一度しか評価のチャンスが無いのに対して、新技術は技術提案との重複も可能になっています。よって、入札時の技術提案で評価され、工事成績評定でも評価されるといったケースもあり得るのです。
従って、有用な新技術の活用を積極的に取り組む事で、入札時の技術点の向上を見込めると共に工事成績評定での加点も見込めるのです。

●ここで「新技術」を活用するにあたっての注意点ですが、考査項目別運用表にもありますが、加点の対象となるのは、請負者側から活用を提案し、自社の費用負担で実施した場合に限ります。これを「施工者希望型」言います。逆に発注者が新技術を活用するよう指定している場合を「発注者指定型」と言いますが、「発注者指定型」は加点の対象にはなりません。
よって、請負者から提案した場合でも協議により設計変更が認められると、新技術の活用に関する費用は発注者が支払う事になるので取り扱いとしては「発注者指定型」となり加点対象外となってしまいますので、注意が必要です。
上記の話は、工事の受注後に提案した場合に限ります。入札前に技術提案の中で新技術の活用を提案している場合は、技術提案項目については設計変更の対象にはなりませんので、きちんと履行をすれば加点の対象から外れることはありません。よって、工事成績評定時の取りこぼし無くし、入札時の技術点の向上も見込むなら、技術提案の段階から新技術の活用を提案をしておく方が良いと言う事がお分かり頂けると思います。

●しかし、活用する「新技術」は何でも良いという物ではありません。効率よく評点を得るためには、活用する新技術を適切に選定する必要があります。考査項目別運用表に書いてある通りですが、有用な新技術や活用実績が少ないものを活用するほど評価が高くなります。 
まず一番配点が大きくなる「有用とされる技術」についてですが、これは活用して調査に協力するだけで4点加点されるのですが、数が少なく120程度しかありません。(該当する新技術にどんなものがあるか等ついてはNETISを参照して下さい。)その中から、工事で使えそうな技術が上手く見つかれば良いのですが、数が限られているため必ずしも使える技術が見つかるとは限りません。
そんな場合は、「事後評価未実施技術」の活用を図りましょう。「事後評価未実施技術」というのは、NETISの中で「試行技術」となっているものです。活用して調査に協力すると2点、さらに活用効果調査の評価が120点以上であればさらに2点の加点で計4点の加点が見込めます。
どんな新技術でも、活用効果調査の評価が120点以上あれば4点加点されますが、付加価値をつけると、その分コストが高くなるなど一長一短でありなかなか120点を超える評価は見込めないため、活用するだけで加点が見込める「有用とされる技術」や「事後評価未実施技術」を積極的に活用するようにする方が確実だと思います。

                                               (E)



No.25 ■工事成績評点についてG  (5/18)
       

●主任監督員の施工体制及び施工状況の評価については、前回までにお話ししたとおり、事前にチェックリストを確認して抜けのないように対応し、評価項目の内容について施工計画書に反映できるものは反映するようにして、その通り現場の施工を行っていれば概ねb評価以上は望めるものと思います。
 次に出来形及び出来ばえについてですが、これは施工者の技量に依る所が大きく一朝一夕で改善が見込めるものでは無いと思いますが、出来形及び品質のばらつきについての評価に関して言うと、工事の始まりから終わりまで全体に渡って均等にばらついているものより、工事当初は多少ばらつきがあっても工事の完了に近くなるにつれてばらつきが小さくなっているものの方が、工事途上で改善のための努力がされていると認められるので、その点が評価される場合もあるようです。
 ですので、施工当初は管理基準よりも密に測定を行い、ばらつきが大きいようなら、原因を究明して改善を図るようにすれば良いと思います。

●最後に創意工夫ですが、他の工事と差をつけようと思うと、ここで加点されるかどうかでかなり違ってきます。ここの評価方式は、有用と思われる創意工夫に対して1点ないし2点(新技術に関しては2点ないし4点)の積み上げ式の加点(最高7点まで)ですので、
創意工夫をすればするだけダイレクトに評点に跳ね返ってきます。
 評価方法については各地方整備局によって若干違うようですが、私の所では技術提案の履行報告と同様、検査前に施工者から10項目を上限に創意工夫の実施報告を挙げてもらいます。
その中で、評価に値するものを選定し、該当する評価項目に評価を加えます。
 1つの評価項目には、1点・2点・4点(新技術)の配点があり、内容によっては配点以上の点数をつけても良いと言う風に注釈にはあるのですが、余程明確に優れていると判断できる物以外は、原則として配点以上の点数はつけないので同じ評価項目に該当する創意工夫を複数挙げたとしても重複しては評価されにくいです。
 よって、創意工夫を挙げる時は、施工・品質・安全衛生について満遍なく挙げるようにする方が評価する項目が重複して評価されなくなるというリスクは軽減できます。

●それと創意工夫を挙げる際の書き方についてですが、技術提案のところでも触れましたが、成果物の品質の向上や、周辺環境への配慮(騒音振動の低減、規制による渋滞の緩和)、第三者への安全性の向上などを目的とした書き方にして下さい。工夫した本人だけが得をするのは、ここでいう創意工夫には該当しません。
あとは、具体的な成果を記載しておくのも分かり易くて良いと思います。創意工夫の結果、何日の工期短縮になったと言う風に、何(誰)のために、どのようにして、どうなったか。というような書き方が理路整然としていて良いと思います。

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No.24 ■工事成績評点についてF  (5/17)
       

●今回は、少しでも工事成績評定で評価を得るための施工計画書の書き方と題して作成の際の留意点について少しお話ししたいと思います。
 施工計画書は、その工事を行う上でのマニュアルです。なので、現場の善し悪しは施工計画書の善し悪しとも言えます。監督員が常に現場の作業状況を確認できれば良いのですが、複数の工事を並行して監督しなくてはならないため、全てを確認することは現実的にはできません。そこで現場で確認できなかった分は、施工計画書を見て評価をします。
また、施工計画書は施工者の経験やノウハウが詰まったものですので、うまく活用すれば、施工者の技術力をアピールすることも可能になります。ここまで読んでいただければ、施工計画書が提出書類の1つという存在以上の重みがあることをご理解いただけたと思います。

●具体には、どういうことを記載したら評価に繋がるのか?についてですが、それは以前にも紹介しました、考査項目別運用表をご覧下さい。それら評価項目にかかる内容を行っている、行おうとしているという意志が伺えるように記載すればよいのです。
例えば、監理技術者の評価項目に「契約書、設計図書、適用すべき諸基準等を理解し、施工に反映している。」と言う項目があります。実際そのようにしているのか証明して下さいと言われても口頭で説明するだけでは証明になりませんし、説明自体も難しいと思います。そこで、施工計画書を利用するのです。施工計画書の内容に沿って現場の施工を行うため、施工計画書に反映している=施工に反映していると言えます。
例として、施工に先立ち必ず設計照査を行うと思います。施工計画書にも設計照査を行うと書いていると思います。ただこれだけ書いていると「契約書〜を理解し」の部分が抜けています。そこで、「契約書第18条に基づき、設計図書の照査ガイドラインに沿って設計照査を行う」と根拠となる出典を明記するようにすれば、「契約書〜を理解し」の部分も踏まえた施工計画書が出来ます。
同じく、施工方法の所で施工手順を書くと思いますが、そこでも「共通仕様書」や「土工指針」などから実際引用していると思うので、併せて出典も明記しておけば、各種基準を理解して施工に反映しようとしているというのが伺える施工計画書になります。

●他にも、「日常の整理整頓を行っている」や「過積載防止に取り組んでいる」などの評価項目がありますが、これらについても簡単に施工計画に盛り込めるので、しっかり盛り込むようにしましょう。当然書くだけではなく実施して貰わないとダメですが。
過積載防止については、防止策もそうですが、もし違反を発見した場合にどのように対処するかまで記載しておけば、なお良いです。以前、書いてないので口頭で尋ねたら、受け入れ拒否して返しますと言うので、それでは帰りも違反になりますね。というやりとりをした覚えがあります。書く時は、墓穴を掘らないようによく考えて記載しましょう。

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No.23 ■工事成績評点についてE  (5/12)
       

●さて、今回からは、工事成績評定で少しでも良い評価を得るためには、どのような事に留意すれば良いのかについて述べて行きたいと思います。今回のテーマの冒頭にも言いましたが、1つの工事に評点をつけるのは3種類の人間がいます。主任監督員・総括監督員・工事検査官の3種類です。各々評価するポイントが違いますので、それぞれの評価者で留意すべき点も違ってきます。よって、評価者毎に留意点を述べていきたいと思います。
 しかし、評価する人間によって、評価基準もまちまちです。なので、今から述べる事は、あくまでしないよりもした方が評価されやすいという相対的なものです。書いてある通りにしたからと言って、絶対的な評価に繋がるとは断言できませんのでご了承下さい。

●まずは、主任監督員から説明していきたいと思います。主任監督員とは、維持修繕工事でいう出張所長、改築工事でいう建設監督官がそれに当たります。実際の書類のやりとりや打合せは、監督員にあたる出張所係長や現場技術員と行うのがメインになってきますが、工事を通じて他の評価者よりも一番接する機会が多いのが主任監督員です。
 ですので、基準に則って提出物が提出されているか?や現場で必要な措置や対応がなされているか?など日常的な事柄についての把握をして評価を行います。具体には、施工プロセスチェックリストという物をつけて、(これも以前紹介した本省のホームページ上に公開されています。)これを使って監理していきます。

●実物を見ていただけば一目瞭然なのですが、設定された各項目ごとに確認をすればチェックを入れ確認日を記すようになっています。特に提出期限が定められている物については、当然ですが、きちんと期限を守るようにして下さい。
 項目毎に着手前、施工中、完成時にチェック欄があります。(黒塗りの箇所は対象外)着手前のものは文字通り現地着手前に対応をしておく必要のあるものです。評価されるためには全てにチェックが入っておく必要があります。ですので、どの段階に何をしなくてはならないのか事前に確認して漏れの無いように対応して下さい。
 特に契約締結後は提出書類が多いので、監督員からも書類の提出をお願いしますが、言われる前に準備をしている方がやはり心証は良いと思います。

●他に現地着手前にしておかなくてはならない事で、評価に大きな影響があるのが施工計画書です。施工計画書に盛り込むべき標準的な事柄は共通仕様書に記載されていますが、+α手を加える事で、評価に繋がりやすい施工計画書を作る事が出来ます。
次回は、施工計画書の作成に際してどのような工夫をすれば良いのかについてお話ししたいと思います。


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No.22 ■工事成績評点についてD  (5/10)
       

●まずは工事成績評定制度の成り立ちですが、建設省時代まで遡ると実用性の無い古い話になってしまうので、国交省における現行の制度になってからについてお話しします。
現行制度の開始は、平成13年3月に請負工事成績評定要領が定められ、地方整備局が発注する直轄工事において、工事の施工状況や工事目的物の品質等について請負工事成績評定が実施されるようになったのが始まりです。
その後、平成13年4月施行の「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」で、工事成績評定の結果を公表するなど公共工事の透明性が求められたり、平成17年4月に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」では、公共工事の品質確保にあたり負業者の能力を適切に評価し、それらを有効活用することが求められたりする等、法律やその他関連する制度の制定や改正を受け、工事成績評定制度も改正されてきました。

●成り立ちや変遷は上記の通りなのですが、要は何をするためのものかと言うと、請負業者の技術力や施工能力を評価することで、今後の公共事業に役立てるためのものなのです。
公共事業の成果物の品質や出来形の向上を図るためには、高い技術力を有した優秀な施工業者の手で施工して貰う方がより高い成果を期待できます。逆に劣悪な施工業者の手にかかると品質の低下が懸念され、それを利用する人命を脅かす危険性も出てきます。そのために以後の発注工事における入札の際に工事成績評点制度を利用した劣悪な業者の排除と優秀な業者の優遇を行うようになっています。

●具体的に劣悪な業者の排除としては、詳細については個別の工事で設定しており入札公告に記載されていますが、一定の点数未満の工事は同種工事の実績としてみなさない、過去2年程度の年度毎の平均点のいずれかが一定の点数未満の場合は入札資格自体を与えないなど、入札に制限がかかるようになっています。
優秀な業者については、毎年、前年度の竣工工事を対象に優良工事等施工者の表彰が行われています。工事の難易度により基準が異なりますが一定の評点を超える工事が表彰の対象工事としてエントリーされ、その中から審査を経て局長表彰や事務所長表彰を受けます。表彰を受けるとその後数年間、入札時の総合評価に関する項目にある「企業の施工能力」について加点され、入札時の評価が優遇される仕組みになっています。

●このように工事成績評点は、その工事の完成度がどうであったかという評価だけにとどまらず、以後数年間の入札の可否にまで関与してくるものであり、会社全体に影響を及ぼし兼ねないものです。なので、現場代理人の皆さんには会社の代表としてその現場に居るという認識を持っていただき、工事成績評定で少しでも良い評価を得られるように日々努力していただきたいと思います。


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No.21 ■工事成績評点についてC  (5/7)
       

●引き続き、昨年度より実施されている工事成績評定の改正について説明していきたいと思います。改正内容についての話題は今回で最後です。

4.技術提案履行の確認評価
 従前の工事成績評定要領が策定された時点に比べて、総合評価方式が標準化し技術提案を受けて発注される工事が大半を占めるため、技術提案の履行状況確認の項目を追加した。

(解説)
 総合評価方式について書いた時にも触れましたが、技術提案は入札時に評価され、その評価を含めて落札者を決定し契約を行っているため、技術提案は契約事項であり履行義務を伴います。ですので、技術提案をした事項について履行した事が確認できなかった場合は、契約不履行となりますので当然ペナルティーが科せられる事となります。
 そのペナルティーというのが工事成績評点の減点です。そのため工事成績採点表に技術提案が履行されているかどうかの確認欄が新たに追加されました。そして不履行と評価された場合は減点の対象になります。履行して当然ですので、履行と評価されたからと言って加点はありません。不履行の場合の減点のみです。これが4つ目の改正点です。

●但し、技術提案に記載したからと言って何が何でもやらないといけないと言う物ではありません。例えば、当初発注にあったA工種が受注後に何かしら外的要因で施工が取りやめになった場合は、A工種にかかる技術提案は施工がなくなったので履行できるはずはないため対象外という扱いになります。他にも正当な理由があって履行できなかった場合は、その旨理由を付して報告をすれば対象外の扱いになります。

●次に、具体的にどのように履行確認を行うかについてですが、監督員が現地に赴き技術提案通りに施工がされているか確認を行うのが一番確実な方法なのですが、逐一確認する事もできないので、完成検査前に請負業者からまとめて報告を受けます。
 私の所では、1提案につきA4サイズ1枚で履行状況がわかる資料を提出して貰っています。実施状況の写真を貼って説明文をつけているものが多いですが、たまに写真などでは履行状況を表現しにくいような提案もあります。
例えば「〜します。」という提案は、何かしているのでその状況を写真に撮ればOKですが、「〜しません。」という提案は、していないものは写真に撮りようがないので履行報告の時にどのようにして履行状況を伝えるか苦慮されています。なので、余裕があればその辺も考慮して技術提案をすることをお勧めします。

 以上で工事成績評定の改正点についての説明は終わりたいと思います。次回は、そもそも工事成績評点とは何か?何の為に評価をしているのか?について説明したいと思います。

                                               (E)



No.20 ■工事成績評点についてB  (4/30)
       

●引き続き、昨年度より実施されている工事成績評定の改正について説明していきたいと思います。
2.評定配分の見直し
一部の考査項目について、評価に偏りがあったため、バラツキが少ない考査項目の配点を減じ、バラツキの大きい考査項目の配点を増やした。
(解説)
これも、前回説明したのと同様に各工事間での差別化を図るための改正点です。前回説明した1つ目の改正点は、実際は差があるにも関わらず従前の評価では差が出なかったものに差をつけるために評価段階の細分化をしましたが、2つ目の改正点は、どの工事もほとんど差が出ない考査項目については細分化しても差別化が図れないので配点を少なくし、より差が大きな考査項目の配点を多くする事で、更なる差別化を図ろうとしたのが2つ目の改正点です。

3.高度技術を工事特性に変更
 従前は高度技術といい、請負者の自己申告に基づき主任監督員が評価をしていたが、工事特性に名称を変更して総括監督員が評価を行うようになった。
(解説)
 呼び名は変更になりましたが、内容は一緒で、工事を行うに当たって都市部の交通量の多い箇所で工事を行う場合、規制に伴う渋滞発生の影響や事故の危険性が高まるなど工事を進めるにあたって困難な事が多い。同じく高所での作業や地理的制約があるような現場で工事を行う場合は、特殊な工法に依らないと施工できない場合があり請負者に高度な技術が求められると言うような場合に加点されるものです。
 工事に伴い事故を起こした場合は、事故の程度や原因により点数に幅がありますが評点が減点されます。なので、事故のリスクが高い工事は減点になる可能性も高いので、そういった工事を無事故で竣工した場合はそれに見合う加点を行うべきという趣旨で設定されているものです。

●従前は、工事にあたって事故のリスクを伴う高度な技術を要するものを高度技術として請負者からの申告に基づき評価をしていたため、同じ内容の工事を行っても申告がない場合は加点されないのでバラツキが生じていましたが、上記のように施工が困難な箇所、高度な技術を必要とする工事というのは、工事の特性であり請負者の自己申告ではなく発注者側が判断するべきものあると言う事から、工事特性に名称を変更して発注者側の判断で評価するように変更になったというのが、3つ目の改正点です。

                                               (E)



No.19 ■工事成績評点についてA  (4/28)

 質問 工事成績表についてもっとくわしく知りたいので、よろしくお願いします


●前回、工事成績評点について少しお話ししましたが、詳しく説明して欲しいという要望がありましたので、もう少し踏み込んで説明したいと思います。昨年度より工事成績評点の評価基準が変わりましたという話をしましたが、まずはどのように変わったのか?からお話ししたいと思います。

●改正の内容は、国交省のホームページ上に記者発表資料として掲載されていますので詳しくはそちらを参照していただく方が確実ですが、簡単に説明すると大きく分けて4つの改正点があります。以下に個別の改正点について順を追って説明していきます。
1. 評価段階の細分化
 従前は、各考査項目について3〜5段階評価であったものを4〜7段階評価に変更した。
(解説)
前回コラムのリンクにある工事成績採点表を見ながら読んで貰えるとわかりやすいと思いますが、工事成績評点の付け方として、各評価者がそれぞれの担当する考査項目について4〜7段階で評価をして、その評価に対する加減点を累計していく方式になっています。
例えば、技術検査官の考査項目は、施工管理、出来形、品質、出来ばえの4つがあります。全てa評価が得られた場合、順に+5、+10、+15、+5の合計+35点が付与されます。これだけでは100点満点にならないのですが、基準点としてどの工事も元々65点与えられているので、加減点の最大35点が加わると100点満点になります。
同じく、主任監督員、総括監督員も同じように最大35点の加減点を有しています。同様に考査項目ごとに評価をしてその加減点の累計に基準点を加えたものが各評価者の評価点となり、前回コラムで紹介した評価割合を乗じて集計したものがその工事の評点となります。

●今回の改正は、各考査項目を評価する時に従前の5段階評価では評価が偏ってしまい、工事ごとで評価に差が出にくいという問題を解消するために行われました。従前のa〜eの5段階評価では限りなくa評価に近いが少し届かないものはb評価、同じく限りなくc評価に近いがc評価とまでは言えないというものもb評価になってしまい同じ点数が付与されていまいます。四捨五入で「5.4が5」、「4.5が5」になるような感じで、実質0.9の差があるにも拘わらず点数には反映されないという問題がありました。
そこでa評価に近いが少し届かないものはa’評価、限りなくc評価に近いがc評価とまでは言えないというものはb’評価というようにa’、 b’評価を加えた7段階で評価する事により両者の差別化を図ろうというのが1つ目の改正点です。

                                               (E)



No.18 ■工事成績評点について@  (4/23)
       

●昨年度完成工事の工事成績評点の通知もほぼ終わったようです。担当された工事の成績評点はいかがだったでしょうか?何も無ければ従前よりはいくらかは良い点数が取れたかと思うのですがどうでしょう?
 既に知っている方がほとんどだと思いますが、昨年度から工事成績評点の評価基準が変わっています。そのため従前よりも必然的に高得点が取れるようになっています。ですので、これを知らずに良い点数が貰えたと思っていた方は申し訳ないですが、ぬか喜びです。

●工事成績評定は、最少3名の評価により行われます。総括監督員と主任監督員と工事検査官の3名で、評価の割合は、総括:主任:検査官=2:4:4です。完成検査以外に中間技術検査を受検すれば、その分評価する工事検査官が増えますが、評価割合は変化しませんので、工事検査官の持ち点は平均値が採用されます。
 例えば、総括が80点、主任が75点、検査官@が78点、検査官Aが82点の評価をしたとすると、その工事の評点は、80×0.2+75×0.4+78×(0.4÷2)+82×(0.4÷2)=78点ということになります。

●あまり知られていないかも知れませんが、この評点の算出方法や各評価者が何に基づいて評価を行っているのか?という、考査項目の運用表は、国土交通省のホームページ上で公開されています。
(http://www.mlit.go.jp/tec/sekisan/sekou.html)  ←クリック
 よって、試験問題が公開されているのに等しいので、良い評点を狙うなら一度しっかり目を通しておく事をおすすめします。しかしながら、書かれている事は至って当然の事が多いです。例えば、「工事着手前に施工計画書を提出しているか?」とか「現場代理人が工事全体を把握しているか?」など当たり前のことが大半を占めています。

●そんなこと当然やっている!と思うかも知れませんが、では具体的にどのように工事全体を把握しているのですか?説明して下さい。と言われたどう説明しますか?意地悪な質問に聞こえると思いますが、評価者としては当該項目を満足しているか確認する義務があり漠然と評価はできないので納得のいく説明を求めます。ここで事前に準備をしていてちゃんとした説明ができるかどうかで評価が変わってきます。考査項目は公開されているのに予め答えを準備していないというのは、評価を下げる要因になりかねません。
 しかし、なかなか口頭だけでは説明しにくい事もありますし、検査の場では緊張して頭が真っ白になって言いたい事がちゃんと伝えられないと言った人は説明資料を準備しておくのも一つの手です。資料にしておけば言いたい事が飛ぶこともないですし、お守りを持っていると思えば安心して落ち着いて対応も出来ます。また、しっかり準備しているという好印象を与える事も期待できます。逆にばたばたしていると印象は悪くなるでしょう。

                                               (E)



No.17 ◇異常気象?  (4/21)
       

●先週末は4月半ばにも関わらず首都圏では雪が見られたそうです。なんでも41年ぶりの観測史上最も遅い降雪とのことで、上越新幹線などの交通機関にも影響が出たようです。
 首都圏に限らず全国的にも寒暖の差が激しいようで、私の住んでいる所でも暖かい時は日中20℃近くになりますが、2桁に届かない寒い日もあり、片付けようとしていた暖房器具をまた引っ張り出さないといけないような状態でした。

●地球温暖化が叫ばれる中にあって、こんな時期に雪が降るなんてと思ってしまうのですが、ここ数年の天候は暑い時と寒い時や雨が降る時と降らない時などの差が顕著になっているように思います。
 昨年の兵庫県佐用町の水害は記憶に新しいところですが、ゲリラ豪雨と呼ばれるような局所的に短時間に集中して降る雨が頻発しており、大規模な水害に発展する危険性が高まってきています。

●周知の通り、日本の地形は中央に急峻な山地を有するが平野部が狭いために、諸外国と比較して河川の勾配が非常に急です。その為、降った雨はすぐ河川に集まり流出しようとします。さらに都市部では市街化が進み地表のほとんどがアスファルトで覆われているため、雨が地中へ浸透しにくく保水機能が低下している。そのため雨水の河川への流出が顕著になり、都市河川の水位変動は急激な場合が多い。
 同じ量の雨が降るとしても、ある程度の時間をかけて段階的に降るような場合は、ダムや堰などで流出量調節をおこなうなど、ある程度の河川流量のコントロールが可能であるが、短時間に集中して降られると、どこも飽和状態となり調整がつかなくなってしまいます。よって日本の国土の特徴から、局所的に短時間に集中して降るゲリラ豪雨に見舞われると水害に発展しやすい状況にあると言えます。

●しかし、そんな事は言い訳にならないので、国民の命と財産を守るための防災体制を整えるのが国の使命なのですが、堤防の整備などハード面の対策は多大な費用や時間がかかるため、効果が得られるまでに時間がかかり過ぎてしまう。
 そのためハード面の対策と並行して、今後は減災を目的としたソフト面の対策がより重要となってくる。被災しても避難が出来る場所の確保や被災者がしばらく生活できるだけの物資の確保、ハザードマップを作成し住民の防災意識の高揚を図るなど災害による被害を最小限にするための対策を各自治体も行っています。
 しかし、最終的には国民1人1人が災害に対する意識を持って行動することが一番の減災に繋がると思います。これから梅雨や台風の時期になりますが、避難場所の確認や非常袋を用意するなど、自分の命は自分で守るくらいの気持ちで準備をしておきましょう。

                                 (S)



No.16 ◇学科試験の勉強法A  (4/20)
       

●専門土木は、分類の仕方にもよりますが鋼構造、コンクリート構造、河川、砂防、ダム、道路、港湾・海岸、トンネル、上下水道、鉄道など10項目くらいに分類されます。1項目について大体2〜4問出題されるので、得意分野を3〜5項目作れば回解答ノルマである10問に対処する事が出来ます。
 しかし実際の工事経験を通じての得意・不得意分野としては上記分類よりも土工、コンクリート工、舗装工などと言った工種的な分類になると思います。なので、上記分類で道路が得意分野としても、土工は得意だが舗装は不得意だと言う場合も出てきます。
 よって、得意分野の中の不得意工種について重点的に勉強するようにすれば、さらに得意分野の強化に繋がり高得点を望めます。

●では、不得意工種をどうやって勉強するんだ?という事ですが、答えは問題集の中にあります。過去問をずっと解いていくと気づくと思いますが、複数年に渡って似たような問題が出題されています。出題頻度が高い問題は当然本試験においても出題される確率が高いのでそこを勉強しない手はありません。
 また、そういう頻出問題は、共通仕様書に載っているような基本的な内容の物が多いので、参考書を別途用意しなくても共通仕様書の当該工種の部分に目を通すだけでだいぶ理解が深まると思います。専門土木の分野に限らずこのことは全ての分野に言えることなので、何度も出てくる問題は要チェックです。
 得意分野の中に不得意工種があるのと同様に、不得意分野の中にも得意工種の問題が出題される事があります。例えば上下水道が不得意分野としても管を埋設する際には、床掘り・埋戻しの作業上土工が発生します。こういった共通的工種は他の工事でも経験があると思いますので、そういった問題は取りこぼしのないようにしたい所です。

●最後の仕上げとしては、実際の試験形式で時間を計って過去問をやってみましょう。時間に追われると焦ってしまいがちなので、どの程度時間がかかるのかを掴んでおくと良いと思います。ですが、心配しなくても時間は余るくらいだと思います。実際私が受検した時も大体の人が試験終了時間前に退席していました。(最後まで残ると試験問題
を持ち帰ることができます。)
 また選択する問題の取捨選択も大事なので、実際に過去問をやって練習しておくのが良いでしょう。練習していると正解している問題を選ばずに間違っている問題を選んでいるという場合もよくあります。逆に15問中12問正解していて、選択した12問がすべて正解を選べていた時はかなり爽快感を味わえます。

●さて、今回で学科試験についての話は終わりです。ではまた実地試験の前にお会いしたいと思います。受験勉強頑張って下さい。

                                 (S)



No.15 ◇学科試験の勉強法@  (4/16)
       

●さて今日からは、実際にどういう風に勉強を進めて行くかについて、私の経験に基づきお話ししたいと思います。私はこういう風にしたと言うだけで、必ずしも皆さんに合う方法とは言えないのですが、参考にして頂ければ幸いです。

●まず、最初は買った問題集をひたすら解きます。何も準備せずに既存の知識でどれだけできるのかを見極めます。500問程度の問題集であれば、1日20〜30問ペースで解けば1ヶ月あれば一通り終わります。
この時に正解・不正解もそうですが、問題の手応えをメモしておきます。そうすることで後から問題を見直す時の目安になります。初見で完全に分かって正解した問題は見直さなくても大丈夫ですし、正解しても選択肢のどちらかで迷ったと言うような問題は後でもう一度見直す方が良いからです。
間違った場合でも、選択肢を絞れたけど間違えたというもの、さっぱりわからなくて間違えたのも区別しておきましょう。さっぱりわからないけど正解した問題も選択問題である以上、存在するとは思いますが、そういう問題も見分けがつくようにしておきます。

●次に得点効率をあげるための大事な作業に入ります。学科試験は、大別して5つに分かれています。問題Aとして(土木一般、専門土木、法規)、問題Bとして(共通工学、施工管理)があります。問題Bは必須問題ですので、設問の全てに対して解答する必要がありますが、問題Aは選択問題であり自信のある問題を選んで解答することができます。
土木一般は15問中12問を選択する必要があり、ほぼ必須問題と言っても良いくらいです。法規も同じく設問は12問ですが、選択数は8問なのである程度選択の自由がありますが、勉強する分野を絞れるところまではいきません。ところが、専門土木については34問中10問を選択すればいいのでかなり選択の幅が広くなります。

●なので、専門土木のわからない分野については捨てるという選択も有用な手段であるため、必ずしも満遍なく勉強する必要はありません。馴染みのない分野を一から勉強するのは時間も根気も必要になってくるので、その労力を軽減する事ができます。
というわけで、前回、最初に参考書を買って闇雲に勉強するよりも、先に問題集を買って自分の得手不得手をはっきりさせる方が良いと言う風に書いたのです。
この判断をするに当たって、問題を解いた時にその手応えをメモしておいたのが判断材料になります。正答率が高い分野で完全分かって正解した問題が多い分野ほど得意分野と判断でき、さっぱりわからないという問題が多い分野は不得意分野と判断できます。

                                 (S)



No.14 ◇試験の準備A  (4/13)
       

●前回は自分に合った勉強時間や勉強法など自分のスタイルを確立しましょうというお話をしました。参考までに私の場合は仕事の昼休みを使っていました。昼食を食べて終えてから午後の始業時間までだいたい30分くらいの余裕がありますのでその時間を使って勉強するようにしていました。
 何故そうしたかというと、まず午後の始業時間までと時間が限られているのでだらだら時間だけ浪費するということにはなり得ません。そして、私の場合は30分程度しか集中力が続かない。家だと色々な邪魔や誘惑があり集中しにくいし、プライベートな時間をあまり勉強の為に割きたくないという思いもあり、結果、昼休みがベストだという結論に至りました。
ご飯を食べた後、仕事が始まるまでボーっとしていると仕事モードに切り替えにくいですが、勉強して頭を使っている状況だとそのまま仕事モードに入れるので、普段昼からは眠くて仕事にならないという方にはおすすめの勉強時間です。眠さ対策には昼寝する方が効果的かもしれませんが。

●試験の準備として他にする事は、勉強するための参考書や問題集選びです。講座を受講したりする方は、そこで配布されるテキストを使えば問題ないと思いますが、独学で勉強する場合、書店などに買いに行くと結構色々な種類があって迷ってしまいます。またどの本も結構いい値段がするので選ぶのにも自然と慎重になってしまいます。
 そんな場合は、身近に試験経験者が居れば、その人にどんな問題集を使って勉強したのかなど聞いてみるのも良いと思います。運が良ければ「もう使わないから」と譲って貰えるかも知れません。
 そういったあてのない場合は、とりあえず過去問集を買う事をおすすめします。この段階ではまだ参考書は必要ないです。まず自分の得手不得手を知るのが先決です、その上で弱点を勉強する方が効率的だからです。理由は次回に説明します。

●自分の勉強スタイルを決めて、問題集を手に入れたらとりあえずの準備は完了です。あとは問題集のボリュームにもよりますが、5月中には一通り問題集を終えられるように自分の勉強スタイルに合わせて1日何ページするなどの計画を立てておきましょう。 そうすると自然と勉強に対するモチベーションもあがって来ると思います。また休みの日に家で勉強しようって方は、今のうちに家族サービスをして協力を得られる体制を整えておくのも準備期間の大事な作業ですのでお忘れ無いように。
                                 (S)



No.13 ◇試験の準備@  (4/8)
       

●平成22年度1級土木施工管理技術検定試験の申し込みが始まって1週間ほど経過しましたが、受検を予定されている方はもう申し込みの手続きはお済みでしょうか?
 施工管理にしても技術士にしても、申し込み時期が年度変わってすぐのこの時期なので、色々バタバタしている内に気がついたら期限が過ぎているなんてことも少なくありません。提出する必要のある証明書類や願書に記載する事項に大きな変化はないので、来年以降に受検をお考えの方は、事前に証明書類の用意や願書に記載する業務経歴の整理を行っておく事をおすすめします。

●1級土木施工管理の第一関門である学科試験は7月の第一日曜日に実施されますので今から約3ヶ月弱の期間があります。申し込みを済ませた今の時期が一番やる気になっているとは思いますが、3ヶ月も勉強に対する集中力が持続しないのでがむしゃらにやるのでは無く計画を立てて勉強をする方が良いと思います。
 私の場合は、申し込み後からゴールデンウィークまでの間は試験の準備期間と位置づけていました。3ヶ月しかないのに1ヶ月近くを無駄にするのか?とお思いになる方もいるかとは思いますが、受験資格がある時点である程度の経験を有しているのです。ですから、本人にその自覚は無くても基礎知識は十分持っているはずなので、焦る必要はありません。

●さて、今からゴールデンウィークまで何をするか?ですが、反省も踏まえて書きますと、まず自分の就業スタイルなどを考えて勉強する時間を決めます。
 平日は残業が多いけど土日は休めるというのなら土日にまとめてと言う風になるでしょうし、休日出勤が多いし満遍なく忙しいと言うのなら毎日30分というのでも良いと思います。最近流行の朝方を取り入れて30分早起きして勉強するというのも効率がいいらしいです。土木業界は昔から朝は早いので、これ以上は勘弁という意見も聞こえてきそうですが・・。
 また、勉強時間と言う風に時間で区切るとなんとなくだれてしまいがちなので、問題集のここまでやると言ったような1日の目標を設定する方がゴールに向かって頑張れると思います。要は、時間だけとってダラダラ勉強するより短時間でも集中して勉強するための自分のスタイルを確立させるための準備期間として1ヶ月を使うのです。

●自分の今までの生活や性格を見直して、自分に合った勉強時間や勉強法を模索するというのは頭では分かるでしょうし、口で言うには簡単ですが、いざやろうと思うと実は1ヶ月じゃ短いくらいです。私もイメージしていたようには出来て無かったと思います。 本当は普段から心がけて継続してやるというのが理想なのでしょうが、一度生活を見直すというのは良い事だと思うので、この機会に是非やってみてはいかがでしょうか?                                 (S)



No.12 ■桜の季節  (4/7)
       

●今年度に入ってからは、異動する人の挨拶や新年度の工事や業務を請け負った業者の挨拶や人の出入りが多く、しばらく慌ただしい日々が続きましたが、ようやく普段の落ち着きを取り戻しつつあります。こういう挨拶回りを目にしていると新年度なんだなぁという実感も徐々に湧いてきました。
気候の方も、先週は急激に冷え込んだ日もありましたが、その後は穏やかな春らしい日が続いており、気がつけば桜も満開に近い状態になっています。この辺りでは、今週末にかけて桜の見頃となっています。

●桜と言えばお花見ですね。その実、桜を愛でるよりも桜の下で一杯飲む方が趣旨になっている人も少なくないとは思います。私もその中の1人ですが・・。
昔はお花見の場所取りと言えば新人の役目という時代もありましたが、公務員の総人件費削減政策の影響で年々新規採用の人数も減少しており、全く新人の配属がないという部署も少なくなくなってきています。その為、就職して2桁年目に突入した今になっても下っ端扱いから脱することが出来ない今日この頃です。

●職場では役職だけは係長なのに、係には自分だけで部下が居ないという状況が日常化しています。職員の数を削減して市場化テストという名のもと公務を切り売りし、外注していった結果です。
昨今、発注者の技術力の低下が問題になっているという話を聞きますが、その裏には現場の実務を外注に頼っている現状に問題があると思っています。技術力向上のためには百聞は一見にしかずで、実際に現場に出向いて施工を見て回るのが一番だと思いますが、職員は内業に手一杯で現場に出ている暇がない状況です。
また若手技術者の技術力の低下についても叫ばれていますが、上記のように部下が居ない状況では育てようもなく、若手が配属されている所は例外なく多忙なところであるため内業に追われ、現場を見て回るような暇がないという現状です。

●人材の育成は長い目で見る必要があるにも拘わらず、一見合理的に思える目先の損得だけで動いた結果、こういった問題が端々でみられるようになってきました。
若い人の土木離れも問題となってきており、若い人が入らない、入っても育たないでは土木の将来は一体どうなるのでしょうか?何も対策を行わず問題を次の世代に積み残すといったような安易な事はして欲しくないです。
私自身も技術者としては、まだまだ半人前の5分咲き程度ですが、いずれは今日の桜のように満開に花開き、そして実を結ぶ日がやってくるのを信じて自己研鑽に励みたいと思います。

                                               (E)



No.11 ◇新年度になりました  (4/1)
       

●4月に入って気分も新たに新年度のスタートと行きたいところですが、昨年度の残務処理に追われています。皆さんの中にもとりあえず検査はパスしたものの、納期が3月40日や50日だという案件を抱えている方もいるかも知れません。
特に支払い関係の部署はむしろこれからが正念場であり、昨年度の案件から手が離れて、本当の意味で新年度を迎えたと言えるのはゴールデンウィークを明けた頃になります。

●このように新年度になったという実感はまだあまり無いですが、暦のうえでは間違いなく新年度にはいっており、その証拠に「平成22年度1級土木施工管理技術検定試験」の申し込みが始まっています。
申し込み期間は、4月1日〜15日と約2週間あるのですが、今から準備をし始めると結構バタバタします。かくいう私も受検した時は申し込み期間に入ってから準備し始めたので願書を取り寄せたり、卒業証明書を取り寄せたり、願書に経歴を記入して証明を受けたりとかなり慌てた事を記憶しています。
なので、皆さんには余裕をもって準備していただきたいと思います。と、今更言ってもすでに遅いのですが・・。

●このサイトは、施工管理技士を受検される方が多く見ていらっしゃると思うので、今後は私が受検した時の経験を踏まえて、勉強方法などについて皆さんの役に立つ情報も提供していけたらと思っています。よろしくお願いします。
                                 (S)



No.10 ■総合評価方式の改善についてE  (3/31)
       

   コラム抜粋 『総合評価方式と技術提案 』へ転記しました。



No.9 ■総合評価方式の改善についてD  (3/30)
       

   コラム抜粋 『総合評価方式と技術提案 』へ転記しました。



No.8 ■総合評価方式の改善についてC  (3/29)

   コラム抜粋 『総合評価方式と技術提案 』へ転記しました。



No.7 ■総合評価方式の改善についてB  (3/26)
       

   コラム抜粋 『総合評価方式と技術提案 』へ転記しました。



No.6 ■総合評価方式の改善についてA  (3/25)
       

   コラム抜粋 『総合評価方式と技術提案 』へ転記しました。



No.5 ■総合評価方式の改善について@  (3/24)
        

   コラム抜粋 『総合評価方式と技術提案 』へ転記しました。



No.4 ■年度末です。  (3/23)

●3月も残すところ数週間となり、工事や業務の完成検査を控えて書類の整理や現場の最終仕上げに追われている時期だと思います。発注者側もこの時期は複数の検査を抱えそれに係る検査書類の作成や検査結果を踏まえ評点の入力を行うなど年間通じて一番忙しい時期になります。
 このように忙しくなって来ると、そもそもなぜ3月に工期末が集中するのか?それにただでさえ忙しくて飛び回らないといけないのに3月になると路上工事が増えて渋滞して余計にイライラするという苦情が3月になると多く聞こえてきます。
 今日は言い訳ではありませんが、よく聞くこの3月の問題についてなぜ毎年毎年こんなことになってしまうのかを書いてみたいと思います。

●ご周知の通り、日本では4月〜翌年3月を1つの周期として動いています。取り扱う予算についても基本的にはこの年度内に使い切るという単年度予算が多くを占めているので、予算は3月までに使い切る必要があるのです。
よって、年間発注計画を作成して計画的に工事発注をしていくのですが、同時に複数の案件は処理できないので、工期確保の観点から施工に時間のかかるものから順にプライオリティーをつけて発注していくということになります。するとスタートは違うが工期末は似通った時期になるという結果になってしまいます。
出来るだけ、工期末が3月に集中しないように1〜3月に分散して工期末を設定していますが、現場を進める上で不測の事態が生じ工事がストップした場合は、工期延期の必要が生じるので結果的に3月に集中してしまうのが実情です。

●また、交通確保のため道路維持(路面補修や除草など)をおこなう工事が年間を通して契約されています。この工事は、事故や災害が起きた時の応急的措置を行う役割も担っています。そのため、3月までは何か災害などが発生した場合は対応しないといけないため契約額に対して余裕をもって動いています。
しかし、年度末には契約額を満額執行しないといけないために雪害や降雨災害のリスクが少なくなる2月末頃から予算執行体制に移ります。この時、比較的短い時間で出来高があがるのが舗装であるので道路規制を伴う路面補修がよく行われます。
国も都道府県も市町村も事情は同じなので、国道、都道府県道、市町村道で一斉に工事が行われると右を見ても左を見ても工事中という状況が発生してしまうのです。

                                               (E)



No.3 ■総価契約単価合意方式の4月導入についてB(3/19)

   コラム抜粋 『総合評価方式と技術提案 』へ転記しました。



No.2 ■総価契約単価合意方式の4月導入についてA(3/18)

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No.1 ■総価契約単価合意方式の4月導入について@(3/17)

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