2.工事監理者の役割
工事監理者は、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認し、実施されていない場合には工事施工者に対してその旨を指摘し、当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、工事施工者がこれに従わない場合は建築主へ報告することとなっている。これらの業務を適正に行うことにより、工事監理者は、設計者や工事施工者とともに、適法で安全・安心な建築物の実現を担保する役割を担っている。
基礎ぐい工事は、目に見えない地盤を対象に行うものであり、支持層の確認にあたって掘削機の音及び振動、地中から受ける抵抗(電流値、積分電流値等)や土質も含めた総合的な判断を特に要する難度の高い工事であるため、工事監理者は、工事監理にあたって慎重を期し、工事が設計図書どおりに適正に施工されることを確認するものとする。
3.工事監理方針の決定にあたって把握すべき事項
工事監理者は、工事監理方針を決定するにあたって、以下の事項を把握することとする。
(1)地盤条件や施工上の留意事項等
工事監理者は、工事監理を行うにあたっては、あらかじめ設計図書の内容及びその前提となる設計条件等を的確に把握しておく必要がある。特に基礎ぐい工事においては、設計者が設計の際に把握した地盤情報(支持層の位置等が複雑な地盤であるかどうか、支持層の判断根拠、敷地内の既存ぐいの有無やその処理状況等)や設計において選定した基礎ぐいの施工上の留意点(くい種・工法の特徴等)が、適正な施工及び工事監理を行うにあたって重要であるため、これらについて、設計図書や建築主を通じて設計者から受ける説明等により把握することとする。また、関係者(建築主、設計者、工事監理者、工事施工者)はこれらの事項について事前に情報共有を図ることが望ましい。
また、設計内容等に疑義等がある場合は、施工前に、建築主に報告し、必要に応じて建築主を通じて設計者に確認するなど必要な対応を行うこととする。
(2)工事施工者の施工計画
工事施工者が作成する施工計画について、設計図書のほか、基礎ぐい工事の適正な施工を確保するために講ずべき措置について定めた告示及び当該工事施工者の属する建設業団体の自主ルール(以下「告示等」という。)を踏まえて、元請と下請の役割分担、くいの支持層への到達等の技術的判断方法、施工記録の確認方法、施工記録が取得できない場合の代替手法等が適切に定められているか否かを把握することとする。その際、必要に応じて工事施工者に説明を求めることとする。
4.工事監理の実施方法
工事監理者は、工事監理方針の決定にあたって把握した事項を踏まえて、以下の方法により工事監理を実施することとする。この際、施工計画に定められた施工記録の確認方法等が設計図書及び告示等に照らし十分ではないと判断した場合は、工事監理を適切に行ううえで必要な範囲で工事施工者に指摘し、必要に応じて建築主に報告するなどの対応を行い確認方法等の見直しが行われたことを確認する、@の立会い確認における抽出率を高く設定する等の適切な対応をすることとする。
なお、複雑な地盤状況である場合や敷地内に既存ぐいがある又は既存ぐいが撤去され埋め戻しされた場合、支持層の位置等について設計図書等において設計者の特別な指示がある場合などは、それらを踏まえて、適正かつ慎重に工事監理を行うこととする。
また、工事の施工中に得られた知見等により必要がある場合には、建築主と協議して工事監理方針を適宜変更するものとする。
@立会い確認
・工事に先立ち、又は工事の初期に、くいの施工における各種監理基準値等を定めるために施工するくい(以下「試験ぐい」という。)については、原則として当該施工に立ち会って、くい長、くいの位置、支持層の土質、支持層への根入れ深さ等をはじめ、必要な項目について確認するとともに、工事施工者による施工管理のもとで設計図書どおりに施工されることを確認する。
・試験ぐい以外のくい(以下「本ぐい」という。)については、設計図書等により確認した地盤の状況等を踏まえ、適正な工事監理を行うことができるよう、必要に応じ、その施工に立ち会って確認するくいを適切に抽出して決定する。
・工事の施工中においても、試験ぐいの結果や実際の地盤の状況等を踏まえ、適宜、立会い確認するくいを追加する。
A書類確認
・@により立会い確認を行うくい以外のくいの施工については、工事施工者の作成する自主検査記録、施工記録、工事写真等に係る書類確認により確認を行う。
・ただし、工事の施工中においても、工事施工者の実施する施工記録の確認方法等について適宜確認し、施工記録の確認等が適正に行われていないと判断される場合には、工事監理を適切に行ううえで必要な範囲で工事施工者に対し指摘し、必要に応じて建築主に報告等するとともに、適宜、立会いによる確認を行う。
5.設計図書どおりに施工できない場合の対応
工事監理者は、現場で支持層の位置の違いが判明するなど当初の計画どおりに施工することが妥当ではない状況が生じた場合(工事施工者からの質疑書による場合を含む。)、建築主への報告や、必要に応じた関係者間での対応策の協議等適切な対応を行うこととする。この場合の協議方法については、あらかじめ関係者間で確認し、共有を図っておくことが望ましい。
6.工事監理の状況の記録
工事監理者による工事監理の状況は、基礎ぐい工事が適切に施工されたかを確認するための判断材料の一つとして重要であり、建築基準法上の中間検査時において報告が求められることから、工事監理者は、基礎ぐい工事における工事監理の方法及びその結果について、適切に記録することとする。また、工事監理の状況について、建築主から求めがあった場合、工事監理の状況の記録を提出するなど適切に対応することとする。
基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン(案)に関する意見募集について
国土交通省では、下記1のとおり、基礎ぐい工事における工事監理ガイドラインを作成してい
ます。
つきましては、下記の要領のとおり、広く国民の皆様の御意見を募集いたします。お寄せいただいた御意見につきましては、最終的な決定を行う際の参考とさせていただきます。
なお、御意見に対する個別の回答は致しかねますので、あらかじめ御了承願います。
1. 趣旨
横浜市の分譲マンションに端を発した基礎ぐい工事に係る問題の発生を受けて、国土交通省は、建築物の安全性確保や国民の不安払拭を図る観点から、平成27年10月に「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会(委員長:深尾精一 首都大学東京名誉教授)」を設置し、再発防止策等について専門的見地から検討いただき、12月25日に中間とりまとめを提出いただいたところです。
当該中間とりまとめにおいて、再発防止策のひとつとして、適切な施工管理を補完するための工事監理ガイドラインの策定が提言されました。
今般、上記提言を受け、基礎ぐい工事が設計図書どおりに適正に施工されることを確保するため、「工事監理ガイドライン」(平成21 年9月策定)に示されている考え方を踏まえたうえで、工事監理者が基礎ぐい工事における工事監理を行うにあたって留意すべき点を示すガイドライン(案)を作成しました。
2. 意見募集対象
基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン(案)
3. 資料入手方法
電子政府の総合窓口(e-Gov)の「パブリックコメント(意見募集中案件一覧)」欄に掲載するほか、国土交通省住宅局建築指導課において資料を配布します。
4. 意見募集期間
平成28年2月1日(月) 〜 平成28年2月27日(土)まで(必着)